ジミーの背に生えていた翅は緑色の光になると消え、
今ではその痕跡すら見つけられない。
「精霊の文献は本当に少ないから詳しくはわからないけれども、
精霊の魔法…特殊魔法って私たちは分類しているけど魔力というより…
生命力が関係する魔法だと聞くわ。実際使っているのは見たことなかったけども。」
ぐったりとするジミーに魔法を唱えるが余り回復した様子は見られず、
ネティベルは木に寄りかからせた。
アイアンもまだ目を回しているためこの2人はここで離脱するしかなさそうだ。
「でもどうしましょう。ここにおいていくわけには…。」
自分のせいでアイアンにダメージを与えてしまったチャーリーは
置いていけないと首を振った。
置き書きで移動用の魔法陣を置いていくことも考えるが、
アイアンが目を覚ました時文字が読めるかどうか……。
ちらりとウェハースを見るが、今回はそれほどダメージがある様子でもない。
子供と戦うかも知れない状況に対応に困るチャーリーだったが、本人は気にしていない感じだ。
「チャーリー君!あたし残るよ!」
大きな声が聞こえ、チャーリーは笑っているらしいようにみえるキャシーに驚く。
「ほら!お屋敷の中だと弓うまく使えないから!ちゃーんと後から追うから大丈夫!」
明るい声に戸惑うが一行だが、ここで立ち止まっているわけにはいかない。
迷うチャーリーだが、服を引っ張られ、ベルフェゴを見た。
「兄ちゃん、こんな狭いところじゃ弓はうまく当たんないよ。
だからここはまかせて先に行こう。」
「そうそう!すぐ追いかけるから!」
不安げなチャーリーの背中をたたくキャシーは笑うと屋敷へと押し出す。
自分の頬を叩き、気合いを入れなおすチャーリーは分かったと頷いた。
「それじゃあまたあとで。行きましょう。」
気絶している二人とキャシーを置いて屋敷に入る一行。
見送るキャシーは喉が渇いたなとあたりを見回した。
屋敷の内部は襖がしまっているせいか、どこから敵が飛び出てもおかしくない暗さと狭さがある。
ぎしっ、と音を立て進む一行だが、軽い音が聞こえ立ち止まった。
転がってきたのは小さな白い球。
警戒する間もなく煙が噴き出すと廊下を白い煙で覆い尽くした。
「大丈夫ですか!?」
白い煙にむせるチャーリーは慌てて確認をとると小さな鈴の音にはっと振り返る。
場違いなほど澄んだ音を響かせる鈴は規則正しく鳴り響き、妙な気配に背筋を震わせた。
くすくすと笑う声が聞こえ、突然小さな風の飛礫が襲いかかってくる。
刀を構え少しでもダメージを減らすチャーリーの耳に他の仲間達の声も聞こえる。
煙がはれるとそこには無数の小さな傷を負った仲間たち。
と・・・
「せっ先生がふたり!?どっどういうことですか!?」
ポリッターが目を白黒させる先には全く同じ姿のネティベルが
お互いを困惑したように見つめあっていた。
|