再び地面が大きく揺れ、思わず手をつくチャーリーは地形が変わる前に繰り出されたローズの鎌鼬に目を見開き、慌てて刀で防御する。
軽く掠めていく斬撃に身をこわばらせるとポリッターの魔法を弾き返すローズに目を向けた。
詠唱すらしないローズは剣を持った右手で魔法を放つと剣を持っていない左手を軽く動かす。
その瞬間、わずかな光が見えチャーリーは目を見開かせた。
ポリッターの間に割って入るエリーを見ると短剣を避けながら再び魔法を放つ。
わずかに遅れて左手から光が放たれるがあまりの速さにエリーは気が付いていない。
放たれた電撃魔法が頬をかすめたエリーは小さく舌打ちをし、氷の刃を飛ばす。
難なく剣で払うローズは剣を持ち替え、ジュリアンにきりかかった。
「いっ!」
繰り出した拳をかわされ、斬りつけられたジュリアンは技の反動で転がっていく。
「大丈夫!?」
慌てて駆けつけるネティベルは上級治癒魔法を唱えようとしてわずかに眉をひそめた。
斬りつけられたにしては出血もなければ傷も打撃の痕しかない。
くるりとチャーリーとベルフェゴの攻撃を避けるローズは青白い光を手にまとい、岩を駆け上がる。
「疾風五月雨斬」
向きを変え、呪文を放つ瞬間チャーリーから放たれた無数の斬撃がローズへと襲い掛かった。
先に魔法が放たれるが、左手に見える光がわずかに遅く放たれた。
「っ…」
岩を転がり落ちるようにして避けるローズだが、
何かに焦っているのか体勢を崩したままポリッターの魔法を避けるとエクスカリバーを地面へと突き立てた。
「細かき飛沫は内なるものを覆い隠す 見えざる物になすすべなし
我らを覆い隠せ 結界系 水魔法水煙」
突き立てた地面から湧き出るように水煙が立ちこめ、一行ごと辺りを覆い隠す。
「補助魔法!?それも魔法無効化…。やっぱりそういうことなのね。」
詠唱したおかげか、強力な結界は無数に降り注ぐ魔法を全て無効化する。
自分の頭上の霧が光るのを見たネティベルはそうだったのね、と剣を引き抜き一行の出方をうかがうローズを見た。
「さっきからおかしいとは思っていたけど、魔法が当たらないんじゃなくてわざと当てないようにしていたのね…。
それもそうとわからないように当たる軌道の魔法を放って、
私達が反応すると同時に別の魔法を当てて掠めていくよう軌道を変えてまで。
それに剣も当たる前に持ち替えているうえに、先は鋭いけど、
私達が触れそうな部分は刃を潰しているわね。」
「えぇ!?魔法に魔法を当てるって…凄過ぎじゃないですか!?」
ネティベルの言葉にポリッターは驚いて目を何度も瞬かせた。
敵を褒めるんじゃない、と頭を叩くネティベルだが、ネティベル自身その技術力の高さに目を見張っていた。
「はぁ………。弱いくせにどうしてそういうのは察しがいいのさ…。
あぁ、言っておくけど剣はエクスカリバーにそう命じているだけでつぶしてはないよ。
じゃないとドラゴンでさえ切り裂ける攻撃力じゃ君達前全員、一振りで真っ二つだもんね。
あんまりそういうグロいことしたくないんだよ。」
弱いくせに、というローズは剣の腹に指を滑らせた。
輝く剣は鋭い光を放ち、柄に仕込まれた水晶が光る。
「殺すなよエクスカリバー。」
「我が主君のままに。」
エクスカリバーの力を解放するローズのつぶやきに男の声が答えた。
「剣が…喋った!?!」
驚くキャシーは思わず矢を明後日の方角に飛ばし、輝く神の剣に視線を送った。
「当り前でしょ。これは初代勇者の魂によって作られているんだから。
それに、そこの天の正虎はその親友であり生涯のライバルだった神託の勇者の魂が入っている。
精剣マナだけは例外だけどね。」
神の剣なんだし当たり前、と答えるローズにアイアンとキャシー、ポリッターを除いた一行は心の中で、どこの常識だ、と突っ込みを入れた。
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