「なぁ。いい加減勇者一行を出迎えるのにいう言葉を変えようかと思うんだが…。何を言ったほうがしっくりくるだろうか…。経験上、どう思うか教えてくれ。」
 ロードクロサイトは何がいいかなーと置いた紙を前にうんうんと唸り、背後でぐったりと寝ている人物にとう。
「・・・。」
 深々と息をはくが返答はない。
「あぁ、やっぱり前のままのほうがいいか?」
 どうだ?と問う魔王の言葉に起き上ると多分そっちにいるだろう方向に顔を向けローズは深々とため息をはいた。
ちなみに彼の心境はただ一つ。
 
(んなもん、どうでもいい)
 
なんとか回復槽から出てきたローズだが、目と喉の修復にはまだ時間がかかる。
なので、正直寝ていたいのだが、暇で暇でしょうがない魔王はお構いなしに部屋に居座っていておちおち寝てもいられない。
「どうでもいいわけないだろう。ローズ、いい加減念話の使い方ぐらいマスターしておけ。」
【しゃべれないとさらにうまく使えないんですよ。それより…どうしてここで悩んでいるんですか。フローラなどに相談すればいいでしょうに。】
 念話で答えるローズはぶつぶつと呟くが、ロードクロサイトは素知らぬ顔で今まで考えた文言に斜線を引き、何がいいだろうかと考える。
「だって、フローラはそんなのかまってられないというし、キスケはこういうのは苦手だし、キルには真顔で見られたし…ローズならそういうのはないからな。魔力を分けるついでだしな。」
【今僕がしゃべれないのをわかっていますよね?ついでに目が見えていないことも。】
 多分、いつものようにだだこねポーズだろうな、と予測するローズは心の中で深々とため息をはいた。
ついでに見られないことに心の床を叩く。
 
「もちろん。だから虐めても文句言われない。血もすぐ飲める。何か不満なことでもあるか?」
「っ…!ごふ。」
 しれっというロードクロサイトに思わず声が出そうになったローズは激しくせき込んだ。
背中をたたかれ、落ち着いたところでケアロスらの作った喉を治す為の薬湯を口に含み、大きく慎重に息をはく。
「私がいてよかっただろうが。まぁ今はもう少し治るまで血は絶対に駄目だといわれているからな。仕方がない。我慢しよう。」
「(今せき込んだ原因、魔王様だと思うのは僕だけですか。)」
 横になりながら心の中で毒づくローズは魔王がいるであろう方向に顔を向ける。
 
 
「まぁ今は治すことに専念したほうがいいな。一か月パフェなしはちょっとなぁ…。」
【シャムリンらに作ってもらえばいいじゃないですか。】
 魔力を分けてもらうローズはパフェぐらい、と念話で言うがやだ、と返される。
ん?と考えるローズだがそれってぼくの作ったパフェしかやだってこと?やだ恥ずかしーと内心でもだる。
「猫又の作るパフェってキウイはないし、前にトータスシェルに作らせたらにぼしが入ってたんだぞ!?鰹節がかかっていたり、マタタビが刺さっていたり。自分達が食べて嬉しいパフェじゃなくて、私が満足するパフェを作ってくれないんだぞ!」
 ロードクロサイトの言葉にがっくしと内心で肩を落とすローズ。
【ちゃんと教えてあげたんでもう大丈夫ですよ。で…台詞は決まりました?】
 内心ときめいたじゃないか、と思うローズは念話で呟かないように気をつけながら問う。
 
 決まっていないらしくまた巻物を手に取る音がし、ローズはやれやれと息をはいた。
「あ…門前にいるな。」
 見張りを担当している2軍から念話を受けたロードクロサイトは深々とため息をはいた。
【早く決めないからそうなるんです。すみません、魔力を分けてもらってしまいまして…。大丈夫ですか?】
 本当にこの魔王は自分と対戦したことのある魔王だよねぇ、というか自分達の時に棘抜いていたし毎回これなの?いつも勇者戦前にはあってなかったから知らなかったけど、毎回このテンションでいくの?と心の中でずっと呟き続ける。
もちろん、やろうと思えば軍属と一部例外に強制的に念話がつなげられる魔王には全部筒抜けだが。
 
「まぁ大丈夫だが…ちょっとお腹すいたなぁ。」
 後でこいつどういじめてやろう、と内心で呟くロードクロサイトの心知らず、ローズはそれならと首を動かそうとして痛みに動きを止める。
【すみません。自分で動けないので。】
「わるいな。まぁそうかからないだろうし、早く治すように専念しろ。1軍の仕事までやりたくない。」
 言って見るもんだ、と内心喜ぶロードクロサイトはにやりと牙をむいた。