何とか起き上がるキャシーだが、慌てたように何かを揺さぶった。
キャシーが戦闘不能にならなかったのはウェハースが飛んできたキャシーを受け止めようとして下敷きになったかららしい。
魔法の直撃+キャシーの重みでふらふらとしているがなんとかウェハースも立ち上がる。
はっとしたようにかがみこむキャシーを突き飛ばすとその腕に鎖が巻かれた。
そのままベルフェゴのいるところに投げ飛ばされ、ウェハースとベルフェゴが戦闘不能となる。
剣で応戦していたチャーリーはロードクロサイトの鎌から延びる鎖をよけたのだが、それも魔王の計算のうちだ。
本当はキャシーを戦闘不能にしたかったが、まぁこの際人数が減ればいい。
「闇一閃」
鎌を薙ぎ払い、黒い斬撃を飛ばすロードクロサイトにチャーリーは光り魔法を剣に集め、受け止める。
わずかにはじかれ、下がるチャーリーだが、先ほどまで目の前にいたロードクロサイトがいない。
背後でポリッターの爆裂魔法が当たる音がし、慌てて前に前転すると毛先をかすめるように鎌が横切って行った。
魔法が当たったはずのロードクロサイトは全くダメージが通っていないのか、特に変わった様子もなくチャーリーの残ったメンバーに目を走らせると誰を最後まで残そうかな、と考える。
勇者であるチャーリーはもちろん残すとして、今いるのは回復役のネティベル、魔法攻撃のポリッター、近接攻撃のエリー…遠距離攻撃のキャシー。10人いたメンバーは残り半分だ。
それもMPの少ないポリッターと回復したとは言え、大部体力が削られているキャシー。
その二人は余波で簡単に落とせるため既に除外されている。
問題は30近いコンビと勇者のみ。チャーリーのオリジナル技、疾風五月雨斬によって無数の斬撃が飛んでくるが、ローズの手加減なしの鎌鼬で現れる数より少ない、と鎌をふるうその衝撃波だけでかき消した。
技が通用しない、とチャーリーは悔しさに手を握りしめた。
よく使っている鎌鼬は通用しない。
だからこそ、自分のオリジナル技を放ったがあっけなくかき消されてしまった。
「締め上げろ ヨルムンの尾」
ロードクロサイトが鎌をふるうと柄から再び鎖が伸び、うねりながらキャシーへと襲いかかる。
間に入るエリーだが、短剣で受け止めたはずの刃はそのまま遺志を持つかのように曲がり、エリーをコートごと締め上げる。
刃が連なった鎖により浅く切りつけられ、そのまま投げ飛ばされる。
ロードクロサイトの動きとは別に意志をもったような動きをする鎖はチャーリーと戦うロードクロサイトの鎌へと戻った。
「ローズの聖剣と似たようなもんだ。今更驚くことでもないだろうが。」
ロードクロサイトの鎌を驚いてみているポリッターにロードクロサイトは背後に現れると強い殺気を当てる。
とくに憎悪を抱いているわけではないが、普通に魔法を当てたら年齢的にも体力的にも危ないと判断し、あえて攻撃を加えない。
案の定、ローズの狂気で震えていたポリッターは強すぎる気にがくりと意識を失う。
剣を合わせていたはずが突然消えたロードクロサイトに慌てて周囲を探っていたチャーリーはポリッターが倒れるのを目にいれ、いつのまに、と冷や汗をかく。
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