「一応、俺はユーチャリスと結ばれたんだからあっちが義理の兄何だろうけど、どうしたってあいつは弟なんだよな…。」
老い先短いソーズマンとしては、本当にもう心配で仕方がない。
あ、弟としてというかこれって娘を嫁に出す前と似た感じじゃないのか、と思い当たりますます頭を悩ませる。
そんな祖父の葛藤を知らないチャーリーは頭から煙がもうもうと立ち込める。
まず整理しようと、今までの経緯を指折り数えた。
魔王との最後の戦いのとき、こちらの攻撃が弾かれ、鎌で斬られると覚悟した瞬間瞬時に鎌を指輪に戻した魔王の手刀が首に入り…そして目が覚めたらここにいた。
で、ここはジキタリスことチューベローズの屋敷で…。
「おっおじいちゃん…。僕は何日眠っていました?」
傷も塞がり、筋肉痛などもないことに首をかしげるチャーリーは窓の外を見るがわからない。
「ん?5日間だ。なかなか起きないんで心配したんだぞ。ローズに聞いたら魔王の手刀で骨が折れなかっただけまし、といってたからそのうち目を覚ますのかなーと…そう思ってとりあえず顔を見に来たんだ。」
「5日間も!?」
驚くチャーリーにソーズマンはうなずき、この部屋に立ち寄った理由を話す。
あ、そうだとソーズマンは立ち上がると備え付けられた戸棚からタオルを引き出した。
「ほら、大浴場行って汗流してきな。ここは広くてのんびりできて…何より主が淫魔だからかここは混浴だ。」
一瞬、ソーズマンとファイターの爺コンビの立てた親指にどう反応すれば、と戸惑うチャーリーに爺コンビは顔を見合わせ、吹き出す。
「冗談だ。まぁでも本当に広いし、いい湯だからな。おれも行ってこようかな。」
「何だファイター行かないつもりだったのか?」
自分の祖父はこんな人だったか、と戸惑いを隠せないチャーリーは、まだ夢の中にいるんじゃないかと頬をつねる。
「やっぱり仲間はいいな。一緒にいるだけで若返る。ヘアリンがいないのはさみしいけど、あいつはあいつなりに考えあってのことだからな…。」
仲がいい旧一行は家にいるときよりも元気に見え、もういろいろわけがわからない。
「あれ?兄ちゃん起きたの?」
思わず頭を抱えるチャーリーの耳にベルフェゴの声が聞こえ、はっと顔を上げる。
「じいちゃん、猫又のミッケっていう人が今日の夕ご飯は川魚のムニエルだから起きてる人数教えてほしいって。」
「あ…もうそんな時間か。チャーリー、さっさと風呂行くぞ〜。」
すっかりなじんでいるような弟にチャーリーはさらに頭が痛む。
引っ張られるようにしてチャーリーは大浴場へと連れてこられた。
「ずいぶん寝てたから頭すっきりするぞ。」
「はい…それにしても、どうしておじいちゃんもみんな馴染んでいるんですか…。」
もうどうしたらいいのかわからない、とあきらめたチャーリーは祖父に続いて浴室へと入る。
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