【悪いんだけど、ちょっと手伝ってくれる?人の家を宿がわりにした代償。後方支援でいいからさ。】
帰り支度をする一行達だが、そこに突然念話が聞こえた。
【あ、ソーズマン達はいいよ。爺婆に力を借りるほどでもないし。】
そう念話を飛ばしながらテラスに降りてきたのは屋敷の主であるローズだ。
まだ目を閉じたままだが、腰に剣を差した軽装備の姿で手すりに腰掛けていた。
「なんだよ。冥土の土産に思い出づくりさせろよな。」
戦力外通告されたのがよほど不本意だったのか、そう告げるソーズマンにローズは肩をすくめて見せた。
【まぁいいけど。強い冥属性を持った奴を筆頭にした一団がいてね。魔力は十分回復しているし、少し動かないと体鈍っちゃうから僕が行くんだけど…ソーズマン。どれぐらいならいけそう?】
手すりから飛び降り、少しふらつきながら着地したローズに旧一行はう〜んという。
「そうだな…俺は何とか長生きしようって考えずに明日ぽっくりいってもいいやってぐらい頑張れば10分かな。」
「私は20分だな。最後に余力を残して死にたくはない。」
「おれは5…わかったよアーチャー。そうにらむなって。ソーズマンと同じく10分ぐらいかな。」
何かを確かめるローズに3人が答えると、ローズは十分と笑って見せる。
シャーマンは、と顔を向けるローズだが、シャーマンから感じられる魔力が少ないことに口をつぐんだ。
「わしはもう魔力はほとんど残されていないのじゃ…。すまんのぅ銀薔薇の坊。」
「主のためならば予らが力を貸そう。元マスター。」
「我とて恩は忘れてはいない。元マスターの余命短き今返さねば来世まで借りを作ることとなる。それだけはごめんこうむりたい。」
うなだれるファングの周りに風と闇が現れると、力を貸してもいいと精霊王達はぶぜんとした表情で言う。
「眷属についてはもうよい。それと恩を返すことは別じゃ。よいな。余が認めたその魂が燃え尽きるその前に返さねばなるまい。」
「ヴァーユに倣うのは我としては癪だが、そういうことだ。老い先が長ければ我としても呪いなりをかけたがな。肉体の滅んだ魂ならば仕方あるまい。」
精霊王達はそういうと体を上級精霊であるジンとタナトスへと変化させた。
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