移動には先に到着していた魔王の蝙蝠が作り出す渦に入り、戦地へ到着する。
「魔王様、ありがとうございます。どうですか様子は。」
「闇属性のものが多いな。本当にやるのか?むりやり私が抑え込んでもいいような気がするが…。」
 やってきた元一行に目を留めるロードクロサイトはこんなメンバーで平気か?と内心首をかしげつつ、城の敷地内ではないからまぁ化けて出てもここなら問題ないだろうと、前が見えていない四天王長を見る。
魔力を与えたおかげで声は多少出るようになったが目はまだほとんど治ってない。
 
「で…どうしてキルやセイまで?」
 あたりを見回すようにして気配を探るローズはそこに弟子と部下がいることに首を傾げた。
城の守りとか大丈夫なのだろうかと考えるが、そもそもそこを攻め込まれても困るのは住人であるロードクロサイトだけで後はたいして困るようなものはない。
「いえ。伝説とさえ言われている一行が出ると聞いたのでその情報収集に。それを言うならばその隻眼の女性の肩にいるキスケ様のほうこそ…。」
「ちゅ!?」
 今日は私用です、というキルだが、アーチャーの肩を見つつ四天王3人がいるのってどうなんでしょうかという。
 言われたキスケは気配を隠していただけに気づかれたことに驚いたように一鳴きし、元飼い主もアーチャーを振り返った。
「え?キスケ!?なんだってまた…まぁいいけどさ…。」
「さっき、ぴゃっと飛び乗ってきたんだ。まぁいいじゃないの。」
「キスケだって強くなったんだし、いいだろ。」
「大体、四天王戦の時も魔王戦の時もお前の肩に乗ってたんだし。」
 旧一行のそろったような意見に現一行は心の中でいいのかよ、と複数人が突っ込みを入れたが当然聞こえるはずもなく。
 
 
【ごめんね遅れて。後は僕らがやるから…魔王様より後ろに下がってて。】
 与えられるダメージが少ないために長期戦になっている部下たちに念話を送ると、素早く一軍は後退しいつでも出られるようにと武器を構える。
 どうしてもとついてきたチャーリー兄弟とネティベル、エリー、ジュリアンとジミーを横目で見る彼らだが危害を加える気はないらしい。
「さて…銀月の一行ラストバトルと行きますか。」
 ローズから借りた剣を取り出し、柄の部分で肩をたたくソーズマンは幼馴染の背中をたたくとその隣に並ぶ。
 “弓”だけを借りたアーチャーは弦の具合を確かめ、足に巻いた短剣を確かめると同じように隣に並ぶ。
 ファングに憑依したシャーマンと今は上級精霊になっている精霊王たちがソーズマンの隣に並び、アーチャーの隣にジュリアンから借りた布を拳に巻いたファイターが並ぶ。
 来る前にある程度…旧一行曰く昔の身体能力近くまで能力を上げている一行は、標的がいなくなりあたりを見回していた大小様々な黒い怪物達が自分たちを見るのをまったくの無防備な姿で待っていた。
 
 
 一行と黒い怪物たちの視線が絡んだ瞬間、5人の気迫が一瞬にして変わる。
その瞬間、写紙でしか見たことのなかった若い頃の一行の後ろ姿が重なり、チャーリーたちはただ見つめているしかなかった。
「「シンクロ率55% 駆け抜けろ 大鎌鼬」」
 剣を抜いたローズがそのまま流れる動きで剣をふるうと、ソーズマンはローズを見ずに全く同じタイミングで鎌鼬を放った。
 現れた鎌鼬は二人の技が合わさり巨体で群れをなしながら怪物たちに躍りかかる。
 
 通常よりは少し遅く感じる鎌鼬だが、敵の動きが鈍い。
「遅い遅い。目が合った瞬間、影は射止めさせてもらったよ。」
 もがく怪物たちが斬りつけられていく姿に、アーチャーは弓をふるうと手から気が編み出した矢を構え、空へと放つ。
「ローズ、3時の方向に5羽と12時の方向から4羽。」
「ファイター。」
 増えた矢が地面へとあられのように降り注ぎ、再び矢をつがえるアーチャーが曇った空を見つめ、雲しかない場所を示す。
 大岩を投げていたファイターに声をかけるローズはくるりと後方に飛ぶとファイターの腕に飛び乗った。
 岩を投げるかのように高々と放り投げるファイターに、同じようにソーズマンが飛び乗る。
「魔法練るの苦手だから今回足場で。」
「おらよ!」
 同じように放り投げるファイターは地面を殴り地割れを起こすとまだ生きていた怪物を地面に引きずり込んだ。
 
「当たんないでよ!」
 そう言いながら上空にいる魔物に矢を放つアーチャーは首を弓にとおし、肩掛けのようにすると短剣を取り出しファイターとともに群れの中に飛び込んでいく。
二人に群がろうとする怪物たちだが、突風と黒い靄のようなものに弾き飛ばされ、ひるんだところを老夫婦が難なくさばいていた。