ホーテッドマンション

 
 
 一行の現在地はジャポン国のトーホクにある津重半島。
この先にあるホッカイ島に行き、ノーストラリア国に行く予定だ。
「ローズ?どうした先ほどから黙り込んで。」
 親切な船人…はいず、結局ロードクロサイトとローズがそれとなく詩が聞きたいと言い、
海の唄を選曲したところ案の定出てきた海獣にのり、海を渡っていた。
徐々に近づくおしむ半島を見るなりローズは重々しい溜息を幾度となく吐き出している。
 
「ご主人様、変質者様、お飲み物はいかがですか?」
 にこやかな声が聞こえ、振り向くと水筒を持ったジュリアンが立っていた。
「あぁ、私は別にいいが…。ローズも後ででいいだろう。」
「変…質者…。ロードクロサイト様と…格差が…。」
 重々しい気を漂わせ、落ち込むが…はっと顔をあげる。
「どうして僕だけ変質者なの!?」
「この前、お越しいただいたお坊ちゃまがそう呼ぶようにと申しておりましたの。」
「あのガキャ…。ロードクロサイト様。すぐ戻りますので…っぐへっ。」
 ローズは先ほどまでの重い気は何処へやら、怒りに目を燃やし立ち上がりかけ…
ロードクロサイトに取り押さえられる。妙な叫びにネティベルを始めとする数名が不審な目を向けたが、なんでもないことを示し片腕で押さえ込んでいるローズをみる。
「なにか悩みでもあるのか?それに…元人間で現在淫魔と吸血鬼のハーフなんて…
変質なものではないのか?だから別に怒る事ないんじゃ…。」
 
(うわっ!顔近い!…やばいやばいやばい)
 腕にとらわれているため当然距離はあいておらず、ローズの心臓が早く動く。
すると当然酸素の消費量も増え…。
一人首をかしげるロードクロサイトの腕をローズがいくとどなく叩く。
徐々に激しくなっていき、ようやく異変に気がついたロードクロサイトが腕を放した。
「すまん。」
 顔を真っ赤にしたローズは咳き込みながら思いっきり息を吸い込む。
見かねたネティベルが軽い回復魔法を唱えようやクローズの息が整った。
「死ぬかと思った…。」
「まぁこれぐらいじゃ大丈夫だろう。」
 励ましているのか笑顔で言うロードクロサイトにローズはため息をついた。
「これから向かう先が嫌なんですよ…。このおしむ半島には…
それはそれは大層立派な館がありましてね。
そこにすむ婆のおかげで女性が苦手になりましたから。」
「知り合いか?人間の知り合いと言うと…まだ勇者だった頃だな。」
 ローズは思い出すのも嫌なのか、その“婆”に関することは溜息のみで答えようとはしなかった。