「ジミーくんがね、おうちにこないかっていってるよぉ?」
上陸してどこに行くかと言う話をしていると、アイアンがジミーを通訳した。
詠う時は聞こえる声がどうして日常会話で聞こえないのか…。
「異存はない。この辺で召…メイデンの家となればあの一軒屋でいいのか?」
珍しく発言するエリーだったが、ジミーのことを召喚士といいそうになるなどやはりこのメンバーの中でそれなりに常識などを持ち合わせているらしい。
この辺で有名なのかそれとも、遠くの丘に立つ屋敷以外に家がほとんどないおかげか、
エリーの指す影にジミーは頷いた。
「ロードクロサイト様…。本気で…本気で一度帰っていいですか?」
「そこまでクセのある人物なのか?しかし…大体もう年齢的には人間は生きていられないだろ。」
首をかしげるロードクロサイトに会えばわかりますよととぼとぼ歩き始める。
やがてたどり着いたのは大きな城と見間違えるほどの館。
ジミーが先頭となってあけると何かがよぎり、蝋燭の火が激しく揺れる。
「あら…ジミーお帰りなさい。そこの方達は…そう。どうぞお入りになってください。」
何処からともなく声が聞こえ反響する。…姿は見えない。
恐る恐るといった様子のメンバーたちであったが全員はいると同時に大きな音を立て扉が閉まる。
それと同時に天井にあるシャンデリアのような蝋燭台に火がともり徐々に明るくなる。
中世のような重々しい装飾にゆらゆらと揺れる蝋燭。
お化け屋敷以外のなにものでもないが、唯一…清潔である。
「ちょっとまっててくださいね。今主人を呼んで参ります…。」
再び何かが横切り、階段に灯された蝋燭が揺れる。
が、音がない。
「ジミーさんのおうちすごいですね…。」
「時価…幾らかしら…。」
「お・ばっけや〜しき〜w」
「いつかわたしもこのようなお城でご奉仕できたら…。」
それぞれ思いついた感想を素直に述べた。
先ほどまで嫌だといっていたローズも苦笑を浮べ、“城”とは大違いだとホームシック末期になる。
「ようこそいらっしゃいました…。私がジミーの父、スケルトンです。ハイ。」
再び音もなく現れたのは顔色の悪い…目の下に隈が出来たひょろひょろの男性。
ようやく人の姿を観るが…顔が近い。むしろ人との間がない。
「お茶でも用意するので…ジミー。おばあさまに御挨拶してきなさい。」
のっそりと動き…次の瞬間には消え遠くの扉が閉まる音のみが残る。
アイアンがジミーを通訳し向かったのはメイン階段のさらに奥のやや隠れた扉の前。
軽くノックをするが返事はない。
チャーリーが開け様としたがジミーがとめる。
「ジミーくんがいうにはね、おばあちゃんがぎんぱつのひとにあけさせなさいっていってるんだって。」
「うげっ…。あの婆…。」
大きくため息をつくローズだが諦めたのか大人しく扉を開き先頭を切って中へと入る。
中は薄暗く、さまざまな薬草が吊るされ中央には大釜と謎の円陣。
首をかしげるメンバーだが続いて中へとはいる。
警戒していたローズでさえ首をかしげ警戒をと…
「ひぇっひぇっひぇっひぇっひぇ…久しぶりじゃのう…えぇ?銀薔薇の坊や。」
「!!!…こっちこな…」
宙吊り逆さまに出てきた異様なメイクの…老婆は涙目になりつつあるローズをがっしりと掴むと問答無用で顔にキスマークをつける。
顔に大きく口形のメイクをつけさせられたローズはそのままその場に崩れ倒れ、ロードクロサイトが慌てて起こしたが涙を流しつつ失神している。
「おやぁ?こんなところ出会うなんて…まぁ時代が変わったのぅ。
こうしてみれば、相変わらずいい男じゃのぅ。」
「……帰ればよかった。」
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