「昔はよく馬鹿やっていたからなぁ…。その時に確か身分を聞かれて答えたんだが…
文献か何かに残されていたかな?」
「かなじゃありませんよまったくもう。まさか子孫とかそういうオチはないですよね?」
 あははと笑うロードクロサイトにローズはため息をつく。
まさかそれはないだろうと問えばその時は既に子供がいたから違うと返される。
 
「いやだ不潔!なんですか、不倫ですか!夫と子がいるのを知っていて付き合ったんですか!!
不潔!不純!」
 そんなロードクロサイト様なんていや〜と叫ぶローズに、
一行が振り向くがローズの奇行にはなれたのか、
さほど過剰には反応せず各々の暇つぶしへと戻る。
 
 
【インキュバスが言えたことではないとは思うが…】
 さすがに聞かれてはまずいだろうと念で言えば、ローズは小声で返す。
念は魔王が配下等に送ることができるもの。
配下でも使えるといえば使えるが、くせなのかローズは肉声で返答することが多かった。
一応聞こえないよう小声ではあるが…。
 
「僕は人妻にも妻子もちにも手だしませんから!!変なこといわないで下さいよ!
せいぜい未亡人とか男やもめとか…ってかほとんど手出しませんから!!」
 少しはあるのかとロードクロサイトは突っ込みを入れたくなるが、インキュバスなのだから普通だなとあまり深く考えない。
 妻子持ちにはさすがに疑問をぶつけたいところだが軍内でもそういう噂はあったなと、若いのはいいなぁとしみじみ思う。…まさか自分が本命だとはさらさら気がついていないようだ。
 
 
 若干眠くなってきたロードクロサイトはとにかく騒がしいローズをどうにかするかとため息をついた。
立ち上がり一瞬で騒いでいるローズの背後に回ると首に手刀を入れる。
一応手加減はしていたようだが気絶したローズを抱え、上陸まで仮眠を取ることとした。
 意識があればローズにとって幸福極まりないことなのだろうが、残念ながら落ちないようロードクロサイトに抱えられたまま上陸まで意識を飛ばしていたのであった。