「首が痛い…」
「手加減はしたんだが…すまん。」
 意識を回復させる呪文で目が覚めたローズは魔王の手刀が入った首を押さえ降りる。
全員を上陸させ終えた海の召喚獣は短い手を振ると吸い込まれるようにして消えた。
どこか変なところに入ったのか、脱力する体をロードクロサイトに支えてもらい
歩くローズにチャーリーが心配げに覗き込む。
彼は弟の面倒で2人のやり取りはみていなかったらしい。
 
「すぐに宿とってきますね。」
「それなら少し離れているがあっちにある宿のほうが顔が利く。
若干値がはるが…故郷だ。私が出そう。」
 辺りを見回すチャーリーにエリーはあちらだと示す。
宿…ではないホテルといってもいい建物にチャーリーはこんな高級そうなところ悪いですよとエリーをとめるが、気にするなというだけで中へと入ってしまった。
 
 
「ようこ…おぉ!エリー!!!久しぶりだな。
え?魔王倒す勇者一行に加わったのはずっと前に噂で聞いたけど…。」
「久しぶりだな。かわりないか?陛下は…相変わらずか?」
「陛下ならココ最近町でよく見かけますよ。気にしていたようだし一度顔を出しに行ったほうがいいんじゃないのかい?」
 入った早々に挨拶を交わす2人は部屋が空いているかと聞くと人数分よりは若干少ないが、
と、スイートルームへと通した。
 
「ここしか空いていないらしい。まぁ代金は普通の部屋と同じでかまわないそうだから気にするな。」
 すっかり固まるチャーリーにエリーはロードクロサイトらが加わってから初めて見せる、
影のない微笑を向ける。
「すっごい〜〜い!凄いですね!お師匠様!」
「先生…なんどいったらわかるのかしら?あぁ。むやみに部屋のものに触れないで。
割ったら…わかっているわね?」
 興奮気味の弟子を黙らせネティベルはエリーに話しかける。
「わっわしの鎧はどこにおけばいいじゃろうか…。」
 ふらふらと入ってきたパシは通路のど真ん中に鎧を脱ぎおく。
…手からすべり落下した鎧はありえないほど重々しい音で床を振動させる。
「またね…。キャシー、端によせといてもらってもいいかしら?」
「いいよ!でもちょっとまってて!!」
「あぁ、少し重いな。」
 荷物を置き何かしているキャシーだが、彼女が鎧をどかすまでもなくロードクロサイトとローズが持ち上げてみる。
まだ具合は悪そうだが、こてを持ち上げてみせた。
「よくこんなものきてられるなぁ…僕はスピードが落ちるからパス。」
「でもまだ普通の重さだな。まさか昔着てた…わけじゃあないな。」
 重いというわりには軽々と持ち上げ、端に寄せる。
 
「あなた達よく持てるわね…。しかも片手で。」
「いつもこれぐらいので鍛えているからなぁ?」
「大体これが最低でもほしい筋力かな?まぁこれ持てない奴はいませんけど。」
 あくまで普通と言い切るロードクロサイトとローズにネティベルは呆れたようにため息をつく。
チャーリーやポリッターは凄いですねとにこやかに笑っていた。