ノーストラリア国・後編

 
 
「あれ?ローズさんは?」
 宿に戻ったロードクロサイトにチャーリーは首をかしげると、
旧友に会ったとかで先に休んでいて欲しいといっていたと伝える。
買い物を置いてくるというと割り当てられた部屋に入っていった。
誰もいないのと魔法がかけられていないのを確かめるとローブ下に隠していた蝙蝠を
寝台に寝かせる。指を鳴らし呪文を解くとロードクロサイトの呪文で姿を変えていたローズが眠っていた。とりあえず靴を脱がせると掛け布団を引き上げ赤い目元を覆い隠した。
 
 
 吸血鬼は魔界に数多くある種族の中でも、伝説化しているセイなどドラゴンを除いた人型ではかなり長寿のものだとして兄弟などがあまりいない。
ロードクロサイトには一応兄っぽいのがいたが、
何せ歳が離れていたこともあり気がついたらいなかったという程度の認識だ。
聞いた話では酔った勢いで谷に落ちて肉食植物に食べられたとか。
まぁ実際そこを訪れた際食べた本人から聞いた話なのだからまず間違いではないだろう。
…つかよく覚えてない。
 
 
 ローズとユーチャリスのようにお互いを想う兄妹というのはよくわからない絆だ。
だがどこかうらやましいとさえ思う。
歳が近い兄弟ならばもう少し交流があっただろうかと考えるが、成人して間もなく魔王の座に就いたのだから家といえば両親以外思いつかなくなっていた。
まぁよく会いに来るのだから覚えているといっていいのだが。
そういえばキルも母親と仲がいいなと、うちの家庭事情は大丈夫なのだろうかと、ふと考え始めた。
「親兄弟ってそんなに重要なものか?」
「あたしは兄妹たくさんだからとっても大事!
お母さんとお父さんは仕事だからあたしがずっと面倒を見てたの!」
 夕食をとりながらう〜〜むと考えるロードクロサイトに、
兄妹が多いというキャシーが胸を張って答える。
それにとチャーリーも頷いた。
「僕もベルフェゴとは4歳離れていますけど、両親に代わってよく身の回りのこととかしてあげていたし大事な弟です。ロードクロサイトさんはいないんですか?」
「いたにはいたけど…歳が離れすぎていたせいでぜんぜん覚えていないというか…
気がついたら死んでいたというか…。覚えていないなぁ…。」
 そもそも両親の年齢すら覚えていない。
まぁ本人たちも覚えているか不明なところではあるが。
覚えている限りでは100〜200歳ほどの年齢の差だったはず。
まだ若い部類の夫婦ということで自分を含め子供は2人。
増えることがあってもまた交流は無いのだろうなぁと思う。
 
 
「そういえばローズさんって兄妹とかいませんか?なんか…そんな気がするんですけど…。」
「ローズか?まぁ妹がいたな。どうしてだ?」
 そういえばチャーリーの祖母だったか…
うっかり口を滑らせないようにしないと、と珍しく…
本当に珍しく注意しなければと自分に言い聞かせた。
「吸血鬼騒動があったときですけど、夜散歩に行くというローズさんにあって一緒に歩いたんです。
その時いろいろと話をしていたんですけど、僕はベルフェゴを護るために強くなろうっていったら自分も似たようなものだったって。」
 その話の後は用事があるって、酒場に入ってしまったので聞けなかったんですけどね。
と、チャーリーは笑う。
何をしにいったのか大体予測のつくロードクロサイトだが、インキュバスだし、
と特に気にはしていない。