エレアノラの部屋はやはりさっぱりとしていて王女と言うにはかなり質素な内装になっていた。
が、机に高く積まれた写真の挟まる本が妙に違和感がある。
その一つを手に取り捲れば明らかなお見合い写真。
写真には眼鏡をかけ、雪が降る下微笑む中年の男性が。
「これはあのくそ爺やが撮って来た見合いの隠し撮り写真だ。」
エレアノラが暖炉に向かいフォファと唱えるとあっという間に火が灯る。
写真を全て中へと入れると勢いよく、エレアノラの心境のように燃え上がっていった。
「んで、なんで吸血鬼の魔王と…下僕?がこんなところにいるのかしら?」
全身を赤と青のタイツで身を包み、手首から糸を出す蜘蛛のような男の写真が燃えていくのを見ていたローズはずっこける。
「あぁ、ネティベル。惜しいな。それは四天王だ。」
あぁそうなのねと納得するネティベルとどうしてばれたかな〜と悩むロードクロサイト。
それに対しエルフって言う言い訳が苦しいでしょと突っ込むローズ。
パロといかにもうさんくさい名前のグラサン茶髪の男の写真が燃えていく。
「あのさぁ、ありえない写真も燃えてるのは気のせいかなぁ…。」
「それで魔王が何のよう?」
「いや、ただ暇だったから。それ以外であのパーティーに潜ると思うか?」
Mと書かれた赤い箱を持つ奇妙なメイクをしたピエロの写真の向こうに、
見知った赤黒い髪の少年の写真が見えローズは眼を見開き苦笑する。
爺やと言う人はどんだけ一生懸命写真を撮ってきたんだかとその身体能力に呆れる。
だがこうも網羅的に集めるとは…。
まぁ王女よりは年上だが…。
「…まぁ私が加わった理由も似たようなものだけどね。」
「それを言うなら私もだ。」
でなければあれと一緒にいるだけで我慢の限界でしょと2人揃っていう。
「あ、ジャポン国の太子。本当に10人の言葉を聞き取ったのかなぁ。
それらしいこと言っただけじゃないのかなぁ。」
「ローズ?さっきから何独り言を言ってるんだ?」
下僕と言われたのがショックだったのか、燃えていく写真を見ていたローズを
ロードクロサイトが引き戻した。
「実際のところレベルどれくらいなの?」
目安にしたいんだけどというネティベルに2人は首をかしげる。
「僕は前言ったとおりだけど…でもそれは大体70年位前だから今はもっとかな。」
「めんどくさくて計ったことないな。」
「計算ぐらいしてくださいよ!!
だから僕のところに経費のこととか回ってきてセイが全部見てんですよ!?」
「ややこしいんだ。計算は。」
「何百年生きてるんですか…。」
ため息をつくローズにセイがやるならいいだろと暢気なロードクロサイト。
こんな天然で暢気なのが魔王なのかと2人はあきれる。
世界を脅かす魔王。
そして四天王。
実際に戦うところをみた事がないために、その強さを計ることができない。
大体こんな変態が四天王って…他の魔王軍はどんなのがいるのかと考える。
そういえば以前来た少年。
ロードクロサイトに認識があると言うことはまさか四天王なのかと、
人材不足なのかそれともあの少年が凄いのか考える。
「この前の少年…」
「キルか?キルがどうした?」
ネティベルの言葉にもうバレているならと名前を出す。
「まさかとは思うが…探し人って。」
「あぁ、あの重罪人か。うん。そのまさか。だからもっと冷遇していいよ。
あの馬鹿がいけないんだから。」
エリーは半信半疑で問うとローズが頷く。
罪名はと言うネティベルになんだったかなぁと考える。
「なんかすっごい多くて…一番重いのは一部隊壊滅させかけたのと、殺人未遂。」
「あぁ、そういえばローズが死に掛けたんだよな?」
そうです。と肯定するローズに驚きを隠せない。
あの雑巾のどこにそんな力がと考えるがどうしても結びつかない。
「あ、いつもなら大丈夫だったんだけど魔力がかなり少ないときに、
あの馬鹿が雪山の上で爆破系の物暴発させて、
雪崩起こしてうちの2隊が飲み込まれかけたんでそれ庇ったら死に掛けた。
それだけ。」
いや〜目が覚めたとき、身内の私刑を止めるのに苦労したなぁと危機にあったものとは思えないのほほんとした様子で出された茶を飲む。
あの雑巾ならやりかねないわねと2人はいう。
「なんだか分からないけど凄い生活だな。」
「そんなんで本当に魔王軍って…どんななのよ。」
強いよ〜と答えるロードクロサイトに聞いた方が馬鹿だったわとネティベルはため息をついた。
「天然でなくとも言うわけないけどね。」
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