「あぁ、大丈夫です。あってすぐに処刑はしませんから。そこまで非道じゃないですよ。
それより…ばれるの早すぎです。」
 キルは深々とため息をつくとあははと笑うロードクロサイトをみる。
それにしても、と当然のように部屋に入っている2人をみる。
他のメンバーはエレアノラが泊まっていってくださいと言ったのでそのまま城に泊まっている。
が、対魔の呪布が施されていたため安眠を優先にウェハースを待つといって出てきたのだ。
「いいじゃない。それにしても…私たちより年上なのよねぇ…。」
 そうはまったく見えないわと少年ほどの背丈であるキルを見る。
「当たり前です。とはいえ、まだ40歳ですけどね。28歳ですか。
人間でその歳と言うと…いい歳ですね。30歳ともなれば大体人生の3分の1ですからね。」
 子供というのは時として残酷である。
まったく悪気もなく、ただ確かめるようにいうと目の前の影に顔を上げる。
飛んできた攻撃呪文を避けると音も無く二人の背後へと降り立つ。
「どうかなさいましたか?びっくりしましたが。」
「いい?人間に対して接する時は、女性の年齢は黙っておくものよ。」
 背後に移動していたことには驚いたようだが、振り向いたネティベルは黒いながらに笑顔を作り、いい?と言う。
 
「あぁ、それででしたか。それは失礼しました。全然意識していなかったので。」
 ぺこりと謝るとローズにはすぐに分かるような愛想笑いを浮かべる。
日々注意しているローズはキルを軽く睨むとまたやってしまったとばかりに眼を閉じて見せた。
 
 
 そこへ飛んで火にいる雑巾。
 
「あ、あれ…?」
「父さん、お久しぶりです。死刑執行所以来ですね。」
「ほぇ…。あ、あぁ、キルじゃないか。ひッ久しぶり。」
 ウェハースには本人以外には分かるほどの作り笑いを浮かべ挨拶する。
「突然逃げ出すので方々探しましたよ。何故逃げたんですか?」
「そっそれは…前におっおいらは第一軍にいたんだけど…第二軍に降格されてそっそこの上司が前のとこよりも厳しくて…そっそれにたえられなかったんだ。」
 ウェハース以外の全員はこの小さな半鬼の中で、一番太い何かが勢いよく千切れる音を聞く。
その理由はネティベルらには分からないが、
彼が第二軍軍団長四天王キルであることを知っている2人はどれほど怒りが深いか…
鳥肌を立てた。
 
 
「それはそれは…どんな上司ですか?」
「う〜〜ん…ぜっ全然おっ覚えてない。キッキルと同じくらいの歳で…
鬼みたいな性格だと…。わっ若いくせに…こっこき使う嫌なやつ。」
 もう一本。
さらに太い何かが千切れる。
室温が一気に下がり、ウェハース以外はとばっちりの冷気…
いや、殺気と言う名の絶対零度を持つ熱気に下がる。
「それはそれは。酷い子供もいるものですね。かの魔剣士一族の本家の父さんを冷遇するなんて。」
 作り笑いから心配するような顔になると殺気を拡散させる。
ようやく重い殺気から解かれた4人は深く息を吸う。
もっともエリーだけは属性か耐性かの関係からか軽傷ですんだ様であるが。