「父さんがお世話になってます。
以前は急な用事で自己紹介をすることが出来ませんでした。息子のキルと申します。
シルフ様と師匠…ローズさんには10年ほど前、
突然行方不明になった父を探してる途中、お世話になった方です。
魔族ではありますが、あなた方に危害は加えません。」
一行にしばらく同行したいとチャーリーに事情を話すと、
そういうことなら全然かまいませんよと、むしろお父さんと会えてよかったですねと、いう。
いつもならばジキタリス様と呼ぶところだが、ローズはこの一行にチューベローズとしか名乗っていないということからめったに呼ばない愛称で呼んだ。
「そうですね。」
むしろ生きて会いたくなかったと言わんばかりの気を放ちながら相槌をうつ。
チャーリーはニコニコといつものように笑い、殺気はまったく伝わってはいないようだ。
まぁ、癒しのオーラが出ているために負のオーラを受け付けないと言うのが正解か。
「あ、それがウェハースさんの魔剣ですね。初めて魔剣を見ます。」
ウェハースの腰にさされた黒い禍々しい形をした剣にチャーリーらは目を向けた。
閉じられた魔剣の瞳は見えないが、柄部分から発せられる気はアイアンにも分かるほどだ。
それが何なのかわかっているかどうかは別として。
「まっくろ〜。え?ジミーくんもういちどいって〜。きいてなかった〜。」
分かったと思うほうが間違いであった。
「………」
「やみぞくせいのけんだねって。
でもウェハースさんのきとはちがうってジミーくんがいってるよぉ。
ど〜いうことかぜんぜんわかんないけどねぇ。」
「よくわかりましたね。魔剣士族といえば生まれて成人するまでに成長した、
自分だけの魔剣を使うのです。しかし、無くしたため鬼一族が家宝とした、
魔界の名工が作り出した魔剣を母さんが貸し出しているんです。」
ジミーの言葉を初めから理解していたようにアイアンには向かず、感心したように声を上げる。
まぁ以前からロードクロサイトもローズも聞こえてはいるのだが。
そしてアイアンの通訳が実は話は大方あっているだけであることも。
だがここは一つ、
ジミーの個性のためにそしてアイアンの唯一の役目のために黙っておくかと
3人の間では合意している。
「魔剣って魔物しか取り扱えないって聞いたけど…そういうことだったのね。」
しばらく人間に預けられ慣れたのか、それとも魔力がつきかけているのか、
恐らく後者ではあると思うが、
ネティベルが触っても結界ではじかれることはなかった。
それに気がついたネティベルは可哀想にとキルに同情する。
が、キルの方は人間に家宝が触られたということにショックなようで、
ウェハースに向け殺気が放たれた。
【デスサイズも確か魔界の名工が作ったんですよね。】
【あぁ、といってもこれは私の血と髪を入れた特殊なものだ。
私以外の魔力ではまず指輪から出てこない。】
そういえばと、未だ目を吊り上げ貴様のせいでというオーラを放っているキルをみる。
キルが常に携帯しているのは2本の短い魔剣だが、それは本来持つべき魔剣ではない。
鬼の血をひいているがために彼が生まれたとき魔剣は生まれなかったのだ。
まだ成長期ということもあり、彼専用の魔剣が造れず、
代用として渡されたのが今使っている魔剣だ。
【そういえば…ローズは魔剣造らないのか?】
【え?あぁ、エクスカリバーがありますから。】
ひとまずキルをなだめるとローズは腰に下げた剣に軽く手をやる。
光の属性を持つ勇者のみにしか扱えない伝説の剣は、
いまや持ち主ローズしか触れることはできない。
魔界人でありながら光の属性を持つローズは魔王軍にはなくてはならないほど珍重されている。
その一つがこの魔を払う力を持つ神の剣だ。
|