「ローズ、お前風邪すぐこじらせんだから。で、ど〜〜して魔王が?」
「っていうか貴方、魔物の体じゃないの?どうして体弱いままなの?」
 うっさいなぁというローズにファイターは黙って寝てろと、頭を叩く。
「シャーマンにも言ったが暇だったから。」
「あたしが言うのも何だけど…あんた強すぎ。そりゃ暇になるね。
もう魔王やめて弱いやつと交代しなさい。」
 やだとアーチャーにいうロードクロサイトにキルはまぁそうですよねと同意する。
なんとか代えの服代わりに自分で服を出し、
勇者の紋を隠したローズだがやばいかなぁと先ほどのチャーリーを思い出す。
まぁ自覚がないくらいだから大丈夫かなと前向きに考える。
 
 
「それにしても…私が何故この2人のことを知っているとわかったんです?」
 薬を作り終えたネティベルは薬湯をアーチャーへと手渡し首をかしげる。
「何も違和感なく入っているから隠しているんだろうと思ったし、
貴女がとっさに唱えようとしていた呪文。退魔の聖呪文だったからね。
はい、ファイター。しっかり押さえてて。」
 矢を放ちながら気がついていたのかと、初老の女性をまじまじと見つめる。
レベル差…いや、全体的な戦闘の経験値が違いすぎる。
 がっしりと頭と顎を固定されたローズの口に薬湯をたらす。
その途端びくりと引きつるようにローズが手を上げかけ硬直する。
 薬湯を流し終え、ファイターが手を離すとぐたりと動かなくなった。
ん?といいつつ残っていたのをファイターが指に掬い舐め、
思わず硬直したのをロードクロサイトとキルが同じように僅かに指に取り舐める。
 
「ぐっ…にっ苦…。」
「う゛…」
 
 意識が遠のきかけるのを頭を振りどうにか保つと、
飲みきったローズを強者と言うよりも…
むしろ勇気ある者という意味で“勇者”だ、と見る。
「げほっ…また凄く苦いのを…。プリーストを思い出すよ…。」
 よく抵抗せず飲んだなと、眠ったのか意識を失ったのか、
恐らく後者であろう元仲間を見る。
当時の仲間でも白魔導師の女性が薬を調合していたがそれも苦かったなとアーチャーと思い返していた。
 
 
「あぁ。だから今一瞬80年ほど前のことを思い出したのか…。」
「そういやあの時もちょくちょくあたし達のところに現れていたからね…。
あの時もローズが倒れて飲んだ薬湯味見したね…。」
 ほんと暇なのねというアーチャーに仕方ないだろうというロードクロサイト。
「しかし…人間はすぐ風邪をひくな。
ローズや一部の魔界に住む者たち以外はよほどのことがない限り風邪など引かないぞ?」
「そうですね…鬼だけにかかる病気にでしたらなったことはありますが…。
風邪などはないですね…。」
 ローズがそう頻繁ではないにせよ風邪を引いたり、
人間の病気にかかるのを見たことのある2人は首をかしげる。
ロードクロサイトにいたっては、今までくしゃみくらいはあるが熱を出すような本格的な風邪や病気になったことはない。