「あぁ、ネティベルさん。悪いけど…さっきの話とか内緒ね。
 さっきはあたし達の話だったから良かったけど、他人が他人の過去を話しちゃだめ  よ?」
 調べるのは自由だけどねと、アーチャーは釘をさす。
どうしてそこまで言うのかと問いたくなるが、
以前の仲間だということで何らかの考えがあるのだろうと踏みとどまる。
【魔王様、以前から気になっていたのですが…なぜ師匠…
 ジキタリス様は人間である部分を残しているのですか?】
 キルは人間と同じように風邪を引くローズに、前々から気にはなっていたが、
面と向かって聞けなかった疑問をロードクロサイトへとぶつける。
 
 だがロードクロサイトは再び頭を振り同じく念話で返す。
【そのことに関してはあまり言いたくないのとよくは聞いていないが…
おそらく妹だろう。人の部分を残すことでいまだ妹と繋がりがあるとそう思いたいのだろう。】
 無理な話ではあるがなとチャーリーを見た。
ジュリアンらと会話している姿からはまったく変化はないが、
先ほど一瞬だがチャーリーは確かにローズの紋に気がついていた。
ふむ…とこれからのことを考える。
そもそもの目的はこのメンバーのレベルアップだったはず。
様子見のつもりが長く見すぎたなと、ため息をつく。
 
 
【キル、今捕獲したものはどれほどいる?】
【今ですか?そうですね…牢に入れているのであれば12・3は居たはずです。】
 そんなにいるのかと、ならば大陸に着き次第2・3こちらに送るか、
と一行の経験値アップを考え付いた。
だがそのためにも鍵を所有しているローズを起こさなくてはならない。
「今思ったんだが…ローズの方の仕事、かなり量があったな…。」
「ロードクロサイト様がいつもお溜めになる仕事を全部引き受けたからでしょう。
 牢にいたってはジ…ローズさんが光の結界を張ったおかげで、
 鍵を開けない限り不定形な霧状の一族であろうと出られなくなったのですから。」
 普通では光魔法を使えるものなんていませんからねと、手のひらに炎を出す。
 
 
 通常魔法の属性は火・水・風・土の基本属性と聖・闇・冥・光の特殊属性、
そして治癒と無属性に分かれている。
 基本属性は誰にでも習得可能だが、究極まで覚えられるのは多くとも2種類だけ。
その分、合成が可能で火と風なら雷。
  火と土なら爆裂。
  風と水なら氷。
  水と土なら植物。
と、第3の属性を使うこともできる。
そして土は風に強く、風は水に強く、そして水は火に強く、火は土に強い。
 治癒や無属性は魔力と知識さえあれば誰でも扱うことができ、
魔法を扱うものなら必ず2・3は使うことが出来る。
また、魔法が使えないものは分類分けするならば無属性とされる。
 
 特殊属性というのは習得できる者がかなり少なく、
 聖は僧侶や厳しい修行に耐えたもの、神に誓いをたてた神官などにのみ使える、
治癒属性を極めた再生や癒し、退魔の属性だ。
その反対に位置するのが破壊をメインとする冥属性。
これは元からその一族に備わっているか、もしくは無属性の究極にまで達した者のみが習得できる物だ。
 
 そして特殊属性の中で最も特殊なのが光と闇だ。
光は勇者と天に住むという天界人のみ。闇は闇の生物のである吸血鬼と魔王のみ。
ただ例外として人の神に背き、悪魔と契約した召喚術師等や、
他の人間の命を奪う者たちの中には闇属性の者もいるが、
それは本当の闇ではなく、冥属性と言ったほうが正しい分類ではある。
 光属性のものは聖属性の呪文も扱え、闇を打ち払う白い稲妻を扱うことが出来る。
 一方闇属性は冥属性の呪文も扱え、光を覆い潰す絶対的な闇を扱うことが出来る。
他のものは例外があるとはいえ、極端と極端に位置し、
壮大なエネルギーをもって相対するこの二つを併せ持つことはただ一人を抜いてありえないものだ。
 
 キルは凍てつく炎を扱う鬼と灼熱の炎を扱う魔剣士のハーフなので、
少し特殊ではあるが、2種類の炎属性と鬼一族が必ず持つ冥属性だ。
 ロードクロサイトは純粋な吸血鬼であるため元々持つ闇属性と基本属性の風と水。
フローラもロードクロサイトと同じ風と水、キスケは土と水だ。
ローズは勇者だったため光属性を持ち、吸血鬼になったことで闇属性をも併せ持ってしまった。
 そして後は基本属性2つなのだが、人の神は今度こそは魔王を倒すためと、
全ての属性を本人の意思に関係なく与えた。
そのためありとあらゆる呪文を扱えるのと引き換えに、
ローズは不安定な精神と肉体になってしまったのだ。
彼の髪の色と瞳の色が人とかけ離れているのも、そういった経緯だと当の神からいわれたという。