「勇者だった頃に突然現れていたように今度の一行にも魔物を戦わせると?」
夜中に目を覚ましたローズに問うと別にいいですけど、という返事が返ってくる。
ロードクロサイトが一番ランクの低いのはどれくらいかと聞けばう〜〜んと唸った。
あまり低いランクのものは捕獲ではなく抹殺する方が早いため、
そして無駄に管理しなくてもいいということでほとんど牢には入れていない。
「今のメンバーと対等かギリギリって言うところのやつならいます。
チャーリーが光の魔法を使えれば早い敵ですね。」
「あ、そういえば勇者ですよね…。自覚していないようですが。」
うん、それが問題だと思うんだというローズにそうだと突然手を打つ。
またなにかあほな…いや、頭痛のネタを思いついたのかと四天王2人は魔王を見た。
「ローズ。ついでに四天王と名乗って若干相手してやったらどうだ?」
はぁ!?と、素でいうローズだがこほんと咳払いし、
どういうことですかと聞きなおす。
「いや、今思いついたんだが、少し変装して髪隠して幻術で声を少し変えれば出、
来るだろう。」
「だからなんでです?」
いまいち意図が分からず聞き返すローズに、
我ながら面白いことを考えたなと一人ごちる魔王。
「今城に来ても私のところまで絶対これないほど弱いだろう。
考えたんだが強敵というものにあってはいないのではないのかと。
そこで、四天王長自らが出てきて魔物をけしかけ、
倒した段階で全然戦っていないようなのがいたら戦闘不能ぎりぎりにしてくれ。」
あ〜そういうことですか…とため息をつくと分かりましたとしぶしぶ承諾する。
つまりは一度明らかなレベルの差を見せつけ、
全滅させレベル上げをしようという気を起こさせようというのだ。
全滅しても神の印を持った者がいるパーティーは、
最後に教会で自分達の旅の記録をつけた場所まで飛ばされるのだから、
早々死にはしない。
飛ばされる際に邪魔をされたり、飛ばされる前に原形をとどめていなかったりすれば、
その場が己の墓場となる。
「大陸についてからですよね。ところで具合はもういいんですか?」
上2人が決めてしまった以上口だしすることが出来ず、短いため息をこぼす。
ふと、気がついたように尋ねればローズは急に笑顔になる。
「そうそう。僕もさぁずっと気になっていたんですよねぇ…。
普通先にそれ聞きません?」
まだ熱下がりきってないんですけど、と恨めしげにロードクロサイトとキルを見る。
第一に…と言葉を続ける。
「どうしてファイター、布団2つだけでつなげているのさ!!狭いよ!!!」
大体どうして僕とロードクロサイト様の間にキルがいんのさ、
と心の中で嘆くと仕方ないでしょうとキルは肩をすくめて見せた。
はぁ、とため息をつくとファイターが用意した香炉に手を伸ばす。
「そういえばローズ。この旅に出て知ったのだが…。
何故寝るときにラベンダーの香を焚くんだ?
あのファイターは何もいわず準備していったが…。」
部屋にゆらりとラベンダーの香りが広がるとロードクロサイトは不思議そうにたずねる。
それに対しキルはそうですよねぇと以前から知っていたようにいう。
毎年新年にはローズが泊まりに来るらしい。そこでいつも焚くので慣れていたのだ。
「あぁ、これですか?魔王様もご存知のとおり、
4つの属性を持ってしまったがために精神が不安定で。
ラベンダーは安眠が出来るといって以前、僕が精神的ストレスで不眠になった時、
とある方が教えてくれたんです。今ではこれが精神安定剤の代わりですね。
これがないと過去を思い出してしまって。」
以前試したら満足に眠れなかったという。
明日には一度城に戻り体調を回復させてから実行します、
というと寝るから話しかけないで下さいと背を向ける。
だが3秒も経たないうちに振り向き、にらみつけた。
「人の髪で遊ばないで下さい!!!!」
「よくそのままで寝て絡まないな…。」
「タマモさんも同じ銀色の髪ですが少し違うんですね。」
自分の髪と見比べていたロードクとサイトだがローズはその手から髪を取り返す。
キルもキルで自軍の副将、九尾族のタマモの髪とは微妙に違う色なのかと、
注意されながらも間近なのをいいことに軽くひいていた。
結ぶとあとが付くんですとロードクロサイトにいい、
銀狐じゃないんだからとキルに言う。
大体狭いんだからやめてくださいと、不機嫌気にいうとそのまま眠る。
眠気が勝っている時のローズは基本かなり不機嫌だ。
一番恐ろしいのは寝不足の寝起きだと、
屋敷にいる付き猫たちが言うのを2人は思い出した。
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