月明かりのみが支配する中、
身を寄せ合い兄弟のように寝ている部下の二人が熟睡していることを確認すると、
ロードクロサイトはそのまま部屋を出た。
そのまま静かな縁側を歩いていくと大柄な人間がいる傍の柱に据わり、寄りかかる。
「こんな夜分に…。なんのようだ?」
「あぁ、やっときた。どうだ人間の生活ってやつは。」
特に。と答えるロードクロサイトにはははとファイターは笑う。
「ほんと、魔物ってやつは歳をとらないもんだな…。
この年になって始めて老いというものが恐ろしいなって分かるよ。」
特に俺はローズより3つ年上だと丸太ですりむいた手を見つめる。
「そこなんだが…シャーマンはさておきお前達2人は他の人間より若く見えるんだ?」
ローズより年上ということはゆうに100歳を越えているはず、とファイターを見た。
多く見ても70歳ほどにしか見えないといえば彼は短いため息をもらした。
「あぁ…旅をしている途中、俺達は天界へと招かれたことがある。
そのとき、ローズは当時の四天王長との戦いでひどく消耗して…
眠ったまま目を覚まさなかった。そして回復するまで天界に滞在を余儀なくされてしまい、
そこの物を口にした。これでわかるか?魔王?」
天界のことはほとんど分からないな…というロードクロサイトにファイターはそれもそうかと頷く。
「魔界に行ったことはないが…王が支配するのでなく、神が頂点に立つ世界。
天界人は外見が人間とほとんど変わらなかった。
そして背には自由に大空をかける鳥のような翼が生えた人や獣が穏やかに暮らしている。
だけど人間と自分達の違いは食べる物だと、そう言っていた。」
3日間食べただけで、老化が遅くなったとファイターがため息混じりに言うと、
ようやくそういうことかとロードクロサイトは頷いた。
天界人が人間の世界にいないのは寿命が縮まるからかと納得する。
「それと…人間を獲物とするため人間に近い姿をしたあんたらと違って本性はない。
ローズはあんたらのような蝙蝠状の翼がないだろう。自分で姿を変えることはできないはずだ。」
「さすがに人間での1,2年は長く濃密な物なのだな。
少し会話しただけでローズの本性がまだ人間であることを見抜くか。」
やれやれと、ロードクロサイトは月を仰ぐ。
ふと、今の時間を考える。
日が昇るまで残り数刻だなぁと思う。
「寝なくていいのか?」
そう視線をファイターに戻す。先ほどまで話をしていたファイターが動かない。
耳をすませば健やかな寝息…。
「おい!!寝るな!ここで寝るな!自分で寝室になぁ…。放置するがいいのか!?」
揺さぶるがまったく起きない。やれやれととりあえず縁側に寝かせ寝室に戻る。
話し疲れたと、丸くなって眠っている部下の隣に入り眼を瞑った。
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