「あぁ、またあんたか。なにしてるんだ?」
そういわれ、振り向いたロードクロサイトは銀髪の一行を見る。
考え事をしていたせいか気配に気づいていなかったのだ。
「ポウェルズか。…髪を高く結わくのはあまりにあってないように見えるが?」
僕に言わないでよ!という勇者に女性2人が笑う。
っていうかさ、と続ける。
「人のことを苗字で呼ぶなっつうの!すんごい古くからある苗字だからさ、
名前にしてっていつもいつも…。あんただってウンディーネって呼ばれたくないだろ?」
「シルフに改名したといっただろうが!人間の名前なんていちいち覚えていられるか。
え〜っと…チュー…。」
当時はまだ口調が荒かったロードクロサイトだが、ミドルネームの話になると余計あらくなる。
彼らに苗字の代わりに言ったウンディーネが実は女性の精霊と聞いて改名したのだ。
だが、シルフも女性の精霊だと、と影で剣士が突っ込みを入れていたのは彼の知らぬところ。
「チューベローズ!!あんたほんっとあたまわっるいなぁ!!いいのは見てくれだけじゃんか。」
「吸血鬼が見てくれ悪かったら血が吸えないだろうが!!!吸うぞ!」
光魔法の最上級魔法食らわせようかといい、睨み合う2人に間にはいった白魔導師の女性は大きなため息をついた。
「吸血鬼ってもっとなんかこう…静かなものな気がしたけど気のせいね。」
「チューベローズが覚えにくいならローズでいいんじゃないのか?なぁでくの坊。」
「アーチャーーー!!!!人のことをでくの坊とか言うな!この馬鹿女!」
はぁ〜?あんたの頭の方が馬鹿でしょうが、という射手と睨み合った末に目をそらす格闘家。
笑っているのは最年長の怪しいメイクをした召喚術師だ。
「ローズ、薔薇か。大体チューベローズも花の名前だろう。」
「母さんが花好きなんだから気にしないの!それより最初の質問。なにしてんだ?こんなところで。」
人間の付ける名前というのはよくわからんなというロードクロサイトに、ローズはうるさいという。
ローズに言われ、最初に問われたことを思い出したロードクロサイトは獣道の先を示す。
「この先に闇の水晶がある遺跡があると聞いて、どんなものか見た後もって帰るかと思っていたところだ。」
そういうお前達は?というロードクロサイトに白魔導師の女性があら、と声をあげ剣士が続ける。
「俺達も今そこに向かっていたんだ。目的は破壊するため。
あんたとは別の目的だから妨害するか?」
にやりと剣に手を置くといつでも刀を抜けるように構える。
だが、ロードクロサイトは首を振った。
「いや、闇の力に染まった人間ほどまずい血はないからな。魔界で破壊するつもりだ。
だから今ここで壊れようが最終的には変わらん。これ以上まずい血が増えなければいい。」
ただでさえ普通の人間の血はまずいのに我慢できるか、というロードクロサイトにローズは脱力する。
吸血鬼にとってそれは重要だよね、というともういいや、と先に行こうとする。
その腕を引き止めた。
「一応どんなものか見るため付いていくが…。
闇の属性は光が弱点であると同時に光の弱点でもある。分かっているのか?」
「当然。結界で封印したにせよ僕が死んだら次の勇者が出るまで野放しだろ?
だから今のうちに壊そうって言うわけ。」
やられる前にやるし大丈夫というローズにそういうものか?と手を離す。
そういうものなの、というローズの腕をもう一度つかむ。
「何?爪刺さって痛いんだけど。」
「いや、ちょっと小腹がすいたなと。」
はぁ!?と振り返るローズ。
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあーー!!!!という悲鳴が森に響いた。
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