「あれだけの量で何故HPがイエローゾーンになるんだ?」
 ちょっとかじった程度だろう、というロードクロサイトの髪をローズは思いっきり引く。
「昨日から連戦で全然回復してなかったんですよ!このやろう。
 ってか、みんな酷いよ!そこは助けにはいるとかしないわけ!?ねぇ!」
 プリーストに回復してもらったが、HPが減ったことで思い出したかのようにぶり返した疲れが取れず、そうさせた張本人に背負われるローズは仲間を振り返る。
 
 だっていつものことじゃないというプリーストに、そうそうと同意するアーチャー。
大体レベル差が大きすぎて止められるわけないだろいうファイターに、
銀薔薇の坊やには休息が必要じゃぞというシャーマン。
 ローズの血に味を占めたロードクロサイトがこの中では彼からしか吸わないと知っているため、かなり他人事だ。
 
「本当にみんな。もう……ソーズマン!!!!」
「ええ!?何で俺にキレるんだよ!なんも言ってないだろ!!!」
 何でまたこの一行に出くわすかなと、ロードクロサイトはため息をついた。
つい先日も偶然遭遇し、後に剣を交える相手であるこの一行と助けたばかりだった。
「そういえばあんた、今度はちゃんとフローラとかいう女性の許可を得てきたのか?」
 あんたの上司だろ、というアーチャーにロードクロサイトは内心逆なんだけどな、
といいつつ得てきたと答える。
「しかしますます魔王軍というのがよくわからなくなってくるな。
 まぁさすがに魔人であるあんたから聞きだそうなんて思ってないけど…。魔王ってどんな…。」
 
「ちょっとあんた達うっさい!薬、口にねじ込むわよ!!!!」
 ぎゃーぎゃーと八つ当たりするローズと言い返すソーズマンだったが、その言葉にぴたりと止む。
いや、彼女の作る薬は効き目抜群で下手に買うより全然効果がある。
だが、問題はその味だ。彼女が脅迫の道具に自ら使うほど…な味だ。
改良すると効果が薄くなると言い、材料を変えたことはない。
 
彼女は開けた場所で立ち止まり、荷物を降ろす。
アーチャーは気にしないでくれと、ロードクロサイトに言うとプリーストに倣い荷物を降ろした。
「そろそろ、ここいらで休みましょう。明日は万全の体制で行かないと。」
 
 
 
 一行の料理を作るのはソーズマンとローズのため、今日はソーズマンがひとりで簡単な物を作る。
以前、ロードクロサイトが何故女が作らないのだ?
という疑問に顔色を変えたローズとソーズマンが途中で口を塞ぎ、遮ったことがある。
場所を移動して言われたのが
「ファイターが作れば生、アーチャーが作れば野生的な何か。
 シャーマンが作れば人外家畜の食事。そしてプリーストが作るものは即死効果の劇物。」
 と、二人は口をそろえていっていたのだ。
それが聞こえてしまったプリーストが即席で作った、その劇物を3人に食べさせたのは記憶に新しい。
口直しにローズから血を吸いその後目を覚ましたローズから頭突きをくらったが。
 
 
 一足先に眠ったローズにロードクロサイトは目を向けた。
「あれからどうだ?今見た目には変わっていないように思うが…。」
 ぐっすりと眠ってしまえば会話なんか聞こえていないよ、というソーズマンの言葉通り起きる様子はない。
「あぁ…。あんたが記憶を封印してくれたおかげで以前と変わらずだよ。」
「ただ、闇の力をどうにかした方がいいねと言ってこの遺跡に向かうことにはなったけどな。」
 ロードクロサイトの言葉に5人とも顔を曇らせる。
 
 先日の事件。
その事件の前後を含め、2週間分ほどの記憶をローズだけは持っていない。
いや、せっかく見込みがありそうだった勇者が壊れないように、
5人の願いでもあった記憶の封印を施したのだ。
この一行で使えるのはローズだけだったがために自分達ではできないとそういって。
 
「たしかに私の力で封印したのだから易々と破れはしないだろう。
 だが、同等に近い闇の魔法でもぶつかれば万が一という可能性もある。本当に行く気か?」
 ローズが望むから、という答えにまぁ好きにしろと蝙蝠になり木にぶら下がる。
本来起きる時間である夜だが、闇の神殿は夜、闇にまぎれ姿を隠してしまうため昼に行動しているのだった。