【キル?聞こえる?】
 突然聞こえた念話にキルは首をかしげる。
【フローラさん?どうかしましたか?】
【今あの馬鹿が来たんだけど…ケアロスらにとっ捕まっていたわよ。
 また風邪でも引いたのかしら?】
 フローラの声にやっぱりと、キルは軽くため息を吐く。
ケンタロス族のケアロスは治癒の間にいる長だ。
自分の父が起こした事件の怪我のことで定期検査を受けるように言われていたことを思い出す。
 
【はい。風邪ひいて倒れていました。それと…昔の仲間だった人と再会して。】
 と、今の状況を話す。
 
 黙ってフローラが聞いているのにあぁ、とキルはため息をついた。
【魔王様から定期連絡行ってなかったんですね。】
【そうよ。一応ローズからの連絡はあったけど昨日はなかったから、
 だからキルに連絡を取ったのよ。あぁ、あとシヴァルさんから伝言よ。】
 そういえば使い魔である蝙蝠を飛ばしていなかったなと、
ファイターやアーチャーと共に修行をつけてもらっている面々を見る魔王にキルは呆れる。
 
 
【母さんからですか?】
 まさかこの期に及んでウェハースのことか?
と聞きたいような聞きたくないような心境でキルはフローラに聞く。
【体に気をつけてと、それと出来たらチューベローズさんの趣味とか好みとか、
 何でもいいから後で教えてとのことよ。】
 寄りかかっていた岩に思わず頭をぶつけ、岩に小さな角型のひびを入れる。
以前あの馬鹿雑巾のお陰で被害者である当の本人がキルの自宅を訪ね、
いろいろ話した時まぁローズが元々持つ優しさというか、
女性への気遣いにシヴァルは申し訳なさを感じ、何かとあるごとに呼び出し、
会話しているうちにどうやらこうやら…好意を抱いたらしい。
何時の間にとキルも驚いたが。
 
 こればかりはどんな情報でも必ず突き止める2軍の長であるキルも、
優秀な副将2人もお手上げだった。
ただし、一つだけ彼女のそういう恋沙汰といえばまだウェハースがいた頃、
ごめんなさいと笑顔で粉砕されたのがいるということは知っている。
そしてその当の本人は今現在、シヴァルが好意を寄せている師匠の本命…
つまりはロードクロサイトだ。
身近で嫌な三角関係が出来たなぁとキルとフローラは頭を悩ませている。
大体ロードクロサイトはなぜか、好きになる人なる人みんな、人妻とか子持ちとか…。
若いこならいくらでもいるのにというのがキルの意見だ。
 
 まぁ180度以上間違えた挙句逆立ちして、前転宙返り3回転以上してもない話だが、
ローズでなければ何でもいいのではと思っている。
ちなみにシヴァルとローズがくっつく分には特に異論はない。
【もしまた来たら分かりましたといっていたようにお伝えください。
 すみません本当に…。】
【いいのよ。ちょうど暇していたから。それじゃあ何かあったら連絡頂戴。】
 頑張ってねと言われ念話が途切れる。
なんだかなぁと、キルは大きく息を吐いた。