町を出た一行はそのまま高原に進む。
この先の山を2つ越えた先にフレッシュミントがあるのだ。
途中、少し道を外れた先にはファイターが言っていた神山がある。
すこし離れた最後尾を歩いていた5人はこの人気のない場所に来る、と直感し構えた。
ふと、上空に暗雲が渦巻くと膨大な魔力と邪気があふれ出た。
一行もすぐに気がつき、戦闘態勢にはいる。
渦から出てきたのは鎖が幾重にも巻かれた、小山ほどもある巨大な大猿だった。
浅黒い毛並みに覆われ、ぎらつく目は金。
剥き出しの牙からはどろりとしたよだれが垂れている。
その肩に黒いローブ姿の人が足を組み座っていた。
離れていた5人を虹色の輝く膜が包むのが見え、すぐに見えなくなる。
「貴方達が勇者の印を持つ人間を連れた勇者一行?」
聞こえる声はハスキーがかった女性の声。
右手でフードからはみ出た赤い髪をもてあそぶ。
「ひぃーふぅーみぃー…あらいやだ。11人?弱いのと強いのがごっちゃごっちゃ。
それでここまでこれたの?とんだお笑い種だわ!」
アッハッハハハと甲高く笑い、ウェハースに目を留める。
「嫌な臭いがすると思ったらむか〜しうちの軍にいたノティングじゃない。
相変わらずみすぼらしいのねぇ。あなたみたいなのは魔物の恥。
さっさと消えてくれればいいのに。」
顔はまだフードに隠れているが恐らく顔をしかめているのだろう。
嫌悪感をあらわに女は言う。
だが、その言葉をきいたキルとロードクロサイトは結界で外に音が漏れないことと、
見えないことをいいことに顔を背け噴出す。
それに気がついたのかファイターとアーチャーもサルの肩に立ち上がり、
笑う女と笑う魔王とその部下を見比べると、
なんともいえない複雑そうな顔をした後顔を背け、肩を震わす。
もっとも、結界を張った本人からは丸見えだが。
いつものように兄に縋りつくベルフェゴだったが、チャーリーはやんわりとそれを制し、刀を抜く。
アイアンやジミーもそのぴりぴりした空気に気がついているのか、
相手の動向を窺うようにじっと見つめる。
「かおがみえない〜!」
もう彼女に、そういうのに気がついた云々かんぬんは期待しないでおこう。
すればするだけ損するだけだ。
その声に女…赤毛の女はふわりと宙に浮き、再び足を組む。
「低俗な人間がギャーギャーうるさいわねえ。こんなんじゃあ私が手を出すほどでもなさそうね。」
大猿から離れる女に短剣が投げられた。
難なく指ではさみ捕らえた女はエリーを見下ろす。
「私達のことは知っているのに名乗らないというのか?」
「そうねぇ。それじゃあフェアじゃないし、
これから貴方達を叩きのめす相手がわからないんじゃあしょうがないわよねぇ。
私は魔王様に最も近い魔王軍四天王長プリアンティス=アガベ=シィルーズ。
さて勇者は誰かしら?」
女…シィルーズはばさっ、とローブを脱ぎ捨てた。
ローブの下から現れたのは、はねた真っ赤な長い髪と細い碧眼をもつやや小ぶりな顔。
そして首から下は豊満な胸と括れたウェスト。
いわゆるボッキュッボンな体形をし、黒く短いパンツの下からはすらりと長い足が伸びている。
左腿に短剣をつけたベルトと脛の中ほどまでを紐が覆うヒールの高いブーツが白い足を強調させて艶かしい。露出度の高い黒いインナーの上に膝丈の白いコートを羽織り胸元には真紅のバラが咲いている。
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