荒い息を吐き、軽く頭痛を訴える頭にシィルーズはふらりと倒れる。
だが地面ではなく、いつの間にかそばに来ていたロードクロサイトに倒れた。
短く荒い息を繰り返すシィルーズの頭を自分の首筋に導く。
「まっ魔王様…。」
「飲んだほうが早いだろう。あまり飲み過ぎないように。」
 いいんですか?と問うシィルーズに血だけでは足りないだろうが、
と答えその場に抱きかかえたまま座る。
鋭い痛みがし、眉を寄せるが血とともに精気を吸い上げる部下の見慣れない赤い髪を撫でる。
以前とは違いいつも出していない力を調節し、
吸い終わった後には軽い貧血がくる程度となった。
 
 光がシィルーズから発せられるとシィルーズがいた場所には、
ぐったりとしたローズが現れ、寝息が聞こえる。
立ち上がり、マントをはらうと無数の蝙蝠が飛び出し、
手を離しても宙に浮くローズの体を包み込み消えた。
 
 
「しばらくは妾がこうしているしかないようじゃのぅ。」
 それも面白そうじゃが、と答えるタマモは戻ってきたロードクロサイトを見つつ、
やれやれとわざとらしいため息をついて見せた。
「変装して来るって…すごい荒業できましたね。
 まだ60%も回復していないと聞いていましたが…。」
 それでもあれだけ戦えるのだからすごいと、
普段実力のわからない言動がウソのようだと、キルはさすが師匠とうなずく。
「あれは幻術だったのか?」
 あいつ苦手だったような気がするけど…
というファイターにロードクロサイトも首をかしげる。
「いや、詳しいことは本人に聞かなければわからないが…。
 まぁものすごい疲れていたらしい。
 ひとまず…さっきの教会がある町に戻って合流しないとな。」
 徒歩で行くか?と聞くとファイターはできれば別の方法でと頼む。
もう一度蝙蝠を出すと今度は大きな輪となり向こうの景色がゆがんで渦となった。
恐れることなくファイターもアーチャーもロードクロサイトたちに続き通り抜ける。
 
 蝙蝠が消えると入れ違いに誰もいなくなった野原に白服を着た女性が天から舞い降りた。