そのまま思考の進展が見られない2人にロードクロサイトはスパンっ!
とハリセンでローズの頭をはたく。
「いっ!どこから出したんですか!そんな定番的なものを…。」
「ハッコンからだ。少し落ち着け。と…なんでこれなんだ?」
 魔王の力で振り下ろされたハリセンは相当力がかかっていたらしい。
一発でぼろぼろになったハリセンにタマモは笑う。
頭ずきずきしてきたというローズは深呼吸してプリーストに向き直る。
「まぁ突然のことで思考停止しちゃったけど…プリースト…。
 そういうことはさ…人間のときに言うものであって…。今の種族わかってる?」
「淫魔で吸血鬼と天使。わかってる!けどいいもん…
 いつか力つけてローズを天界に幽閉するから…。
 そのためにミドルネームだってローズにしたんだから!!!」
「それ犯罪でしょうがぁぁ!!ってかそんなの許可下りないでしょ。」
 ぅおい、とツッコミを入れるローズだが神様いいって言った、
というプリーストに脱力する。
「大体…ソーズマンとファイターが一緒に酒場で飲んだとき…告白したのに!」
「はい!?それ本気で記憶ないよ!?」
 大体酒場っていつの話だよ、というローズにキル達は白い目を向ける。
唯一ファイターとアーチャーだけは吹き出すのをこらえているかのように肩を震わしていた。
「だってローズ。私が無理やり飲ませた“一杯飲んだら速攻天国キャッホーイ”
 っていうので倒れてたし、天界人になる少し前まで自覚してなかったんだから。」
「…なんかもう僕頭が痛くなってきたよ…。ロードクロサイト様。
 帰っていいですか?」
 早退したいです、とローズは壁に寄りかかる。
当然だめだというロードクロサイトに、壁にめり込むのではないかというほどローズの気が沈んでいく。
というよりも本当に壁に入っていく。
正確には移動するための別の空間に入っていく。
まて、といいつつロードクトサイトが引き戻すとローズは深々とため息を吐いた。
「本当に昔から変わらないな…。見てて飽きない。」
「そーですねー。この80年間培ってきた僕の魔王軍でのイメージが、
 どんどん崩れていきますよ…。本当に…。」
 始終こんなやり取りだったわけじゃないんだけどさ、
というローズに珍しいものを見る目で2軍の要である2人は見つめる。
元人間とはいえ、天界人と魔界人は相反する存在であり、
闇を象徴とする魔界にとっても、
光を象徴する天界にとっても、
敵である種族の2人がここまで仲がいいのはそうそう見られるものではない。
ましてや天使のほうはインキュバスに好意を抱いているという…。
自然と2人は諜報任務をするときの頭に切り替え一語一句逃さず記憶する。
「あのねぇ…。ところでプリースト。
 こっちに来たのはまさかこのことを言う為だけとかそういう落ちはないよね?」
「あぁ、それならさっきチャーリーらにいっていたぞ。フジベレストにいくとかで。」
 アーチャーになだめられ落ち着いてきたプリーストに問うローズだが、
話が進まなさそうだとロードクロサイトが来るまでの話をざっと聞かせる。