様子を見ていただけの魔王一行はこれで攻撃時に一番死にそうなのが抜けたとほっと胸をなでおろす。
【ふむ…すこし一行が変わったようじゃな。】
【ところでタマモさんは…城に戻らないんですか?
そろそろ…クラマが悲鳴を上げそうな気が…。】
後足で耳の後ろをかきあくびをするタマモにキルがたずねる。
本来彼が上司なのだが、遥かに年上ということで未だにキルは敬語を使い、
忙しくないときは自由にさせている。
だがそれでも四天王がいない以上は副将がどうにかしなくてはならない。
キルの許可なしにはそうそう移動していい訳がない。
【申し訳ないのじゃが…妾は今現在、ジキタリス様の命で動いておるゆえ。
今代わりに一軍の5番隊が全力をもって妾の暗殺部を支えておる。】
耳をたれ、すまぬというタマモからローズへと目を移す。
すべての軍の副将を動かせる魔王と四天王長のローズだが、
めったに他の軍を使ったりはしない。
ましてやこうして四天王がいないときなどは副将は動かさないのが普通だ。
【あぁ、そうだ。さすがにタマモのスキルじゃ神山はきついだろうからね。
それじゃあひとまず終わったし…。もしかしたらまた呼ぶかもだけど下がっていいよ。】
例の褒美はもう少し後で、というローズにタマモはやれやれと立ち上がる。
【妾は帰るとして…ノーブリー殿はいかがなさる?】
【僕は神山に行くところで別れるつもりです。父の刑も執行しなくてはいけませんし。】
タマモの問いにキルはこの近距離で念話の会話しても気がつかない父をあごでしゃくる。
【行かないのか?天界にはいかないが、面白そうじゃないか?】
いやしかし、と断るキルだがあっという声に一行を見る。
「プリーストさん、あの…ノーストラリア国の国王様が、
僕の村に住むクラリスという方に手紙をといわれていたんです。
ここからよりも神山に近いので先にフレッシュミント村に行っても大丈夫でしょうか?」
これなんですけど、と出した手紙にプリーストはそうねと考える。
「神山から各地に飛べるから近いところに用事があるなら、
先にそっちに行ったほうがいいかもしれないわ。
それじゃあここからフレッシュミントってことは大体2日だから…。
少しゆっくりしたものね。6日後にフジベレストの麓の祭壇で待ってるわ。
クラリスさんによろしく伝えといて。私達ずいぶんお世話になった人だから。」
うん、と頷き地図に丸を描く。それはフレッシュミント村から近い麓。
懐かしげに笑うプリーストにチャーリーは首をかしげる。
「私とチャーリー君の祖父、ソーズマンは幼馴染なのよ。
クラリスさんは村で本当にわずかな時間だけど呪文を教えてくれたり、
召喚術を教えてもらったりお世話になったの。
その後…3人で旅に出てファイター達に出会って。
でもある屋敷の淫魔騒動を解決するとき…私のもう一人の幼馴染は…。」
そういうと目を伏せ深いため息を吐く。
その様子からチャーリーはすみませんと謝った。
ファイターとアーチャーも気まずそうに顔を見合わせ、プリーストの幼馴染を見る。
|