「なにしていたんですか?」
 今回以外にも馬鹿な…あほな思いつきがあったのかと眉をひそめる。
「前の四天王長の馬鹿が間違えてかけた呪いを解きに、
 とまぁ新しい勇者を見に行こうと思ってな。」
「ついでに寝不足の人の血を失神するほど飲みましたね。
 おかげで心配性な父さんには怒鳴られたあげく大泣きされて
 しばらく夜間外出禁止になったし、
 ユーは泣いたし、母さんにはすっごい心配かけたし、
 プリーストには怒鳴られた挙句殺人チョップ入れられるし、
 キスケには思いっきり噛まれましたし…最悪でした。」
 心底うんざりするようにいうと明後日の方向を見るロードクロサイトを軽くにらむ。
キルまでもが呆れた目でロードクロサイトを見つめた。
 
 
「ソーズマンはソーズマンで苦笑していたというか、
 心配しつつもプリーストのせいで笑っていましたし…。
 あ、そろそろ一軍と三軍の下位魔人・魔獣達がこの町周辺に到着するかと。」
 そうそう、と思い出したように言うローズにロードクロサイトとキルは驚く。
聞けば四天王や魔王の顔を知っているほどの地位ではないらしい。
「さすがにあのレベルじゃあ山にすら登れないですからね。
 プリーストには許可を取ったので、僕の合図があるまで来ません。
 なのでしばらくはこの町滞在になります。」
 独断で申し訳ございませんと軽く頭を下げた。
まったく、と呆れたようにロードクロサイトはため息をつくと仕方ないなと水を飲む。
「そういう意図があるならまぁいいが…次回からは許可を取るんだぞ。
 それと…やるならチャーリーを鍛えてくれたほうがありがたいな。」
「もちろんそのつもりです。だから僕の顔を知らないようなのを呼びました。
 まぁ下位呪文程度は詠唱破棄できるようにするのと技の威力、
 精度速度のUPぐらいはさせますよ。」
 さぁどんなメニューでやろうかなぁ、とキルを見ながらたくらむように微笑む。
その笑顔を見たキルは剣の修行を始めたときを思い出し、身震いした。
心の中ではご愁傷様と手を合わせとばっちりがこないことを願う。
 
 
 
  ほどなくして階段を下りてきたのはチャーリーだ。
3人に気がつき挨拶をする。
「おはようございます。朝早かったんですね。」
 爽やかなオーラを放ちつつ、チャーリーはローズと同様に水を移し、
コップにレモンを絞る。
その一連の動作を見ていたロードクロサイトとキルは偶然並んだ二人を見比べる。
 地元人ならではの常識なのか、特に疑問に思っていないような二人だが、
見比べられることにローズはわずかに眉をひそめた。
【どことなく似ているといえば似ているな。】
【そうですね…。どこと具体的にはいえませんが…。】
 ふ〜むと唸る二人をローズは訝しげに見る。
どうかしたのかと口を開きかけ、階段から降りてくる音に口をつぐんだ。
【念話で何かいいました?】
【気にするな。それよりどうやって切り出すんだ?】
【一応計画は練ってあるんでそのへんはご心配なく。
 ただ、万が一は口裏合わせてくださいね。】
 そういうと部下に念話を送るため窓の外をうかがうようにそっぽを向いた。
念話中は静かにしていないとどうにも途切れてしまうらしく、
あんまりにうるさいとキレる。
そのためそっとしておこうと、ロードクロサイトはメンバーの減った一行を見た。