氷結と灼熱の間

 

 朝食をとった直後怪我を負った憲兵が駆け込み、
チャーリー達はすぐさま気を引き締める。
「勇者様一行とお伺いしております…。町の外にまっ魔獣の群れが…。」
 力尽き扉の前で倒れる憲兵をすぐさまネティベルが回復魔法を唱え、様態を見る。
「大丈夫。気絶しているだけね。
 あの女の仕業かしら…魔獣は知性が低いから早く対処しないと。」
 皆、行くわよと声をかけ隅にいる3人を見る。
目配りをするとロードクロサイトはわかったと頷き席を立った。
チャーリーらに先に様子を見てきてというとエリーと共に路地へと移動する。
 
 
「どういうことなの!?」
 今までこんな手段はとっていなかったはずだと、ロードクロサイトに食って掛かる。
するとロードクロサイトとローズは顔を見合わせ、ため息をついて見せた。
「あのね。魔王軍って言っても下位は本当に知らないんだよ。
 弱肉強食が鉄則だから中には上を倒して魔王に成りたいって思うのもいるのさ。」
「特に魔獣というのは一枚岩じゃあないですし、シィルーズ…彼女はまたちょっと…
 常識とは違うのでなにをしでかすか予想が立て難いんで…。」
「四天王はそれぞれ把握しているが。各軍はまかせっきりで全然わからないからな。
 四天王同士の交流はあっても、それ以下のことは互いに干渉しないからな…。」
 悪いが今回はまったく知らない。
というロードクロサイトにキルもローズも頷く。
本当に統制取れているのかと、頭痛を訴えかける頭を抱え、
ネティベルとエリーはもういいという。
「まぁ今回は馬鹿が多いし、万が一魔王様に危害を加えるものが出たら面倒だし、
 人間が減ると…というか戦いで男手が減ると、僕なんかはすっごい迷惑なんだよね。
 食事的な意味で…。」
 やはりプリーストとの会話が聞こえていたようだが、
さらりと爆弾発言をしたローズから思わずネティベルは下がる。
エリーだけはどうせそんなことだろう、と動じていない。
「まぁそれはおいといて、
 今回はまぁやばそうだなって思ったら僕が微力ながら助太刀をするよ。
 そろそろ移動しないと回復役がいないと不味いんじゃない?」
 遠くのほうで魔獣の雄たけびが聞こえ、ネティベルは確かにそうね、と駆け出す。
それを追おうとしたローズは腕を引かれ振り向いた。
「助太刀!?まさかお前が前で戦うのか?」
 まだ聞きたいことがある、とエリーが問う。
だがローズはそれには答えず不適な笑みを浮かべると腕を解き追いかけてしまった。
 その後を追い行ってしまうロードクロサイトとキルに続き、
仕方なく町の門へと急いだ。
 
 
 
 先頭には野生よりも2回りも大きな獅子が威風堂々と歩き牙を光らせる。
【あ、ムファスカー。】
【珍しく陸の隊長だな。…大丈夫か?】
 獣人であり3軍の陸部隊を纏める長、ムファスカーがいることに気がつき、
大丈夫だろうかと顔を見合わせた。
ふと、上空を鷲が飛んでいるのに気がつきごく普通に建物にとまる。
【スバルナ、久しぶりだな。】
【魔王様。お久しぶりです。と、上から失礼いたします。
 キスケ様からの言伝で様子をと…ジキタリス様はどこに?】
 ロードクロサイトの近くに人間がいるのに気がついたのか、
スバルナはただ羽を休めているように振舞う。
だが、たぶんあそこだと示された方角に思わず足を滑らせ、
危うく転落しそうになってしまった。
幸いネティベルはスバルナの存在そのものに気がつかず、
合流したチャーリーらと戦闘態勢に入る。
【…念のためムファスカーには…。言わないでおきます。
 絶対顔と態度に出ますから。】
【ですね。それが正しいですね。】
 陸部隊長ムファスカーを思い浮かべ、確かにとキルは同意する。
【スバルナ、お前の目と私達の目をつなげられるか?
 さすがにあまり近寄っては不審がれる。】
【かしこまりました。…ただ、私は鳥人なため魔力がございません。
 開放状態にしますので魔王様のお力で繋いでいただければ。】