【ガルーダ殿…。】
【なんだ。このヘタレ!戦闘に集中しろ!!】
 ムファスカーのおどおどした声が聞こえ、スバルナの嘴の端がヒクリと引きつる。
【ごっごっごめんなさい!!でっでもこれは俺の死活問題です!】
 必死な様子のムファスカーにスバルナはため息をつくと何だと先を促す。
【ジキタリス様…食事するときの腕バッサリいってるんですが!!!血出てますよ!!
 こればれたら一軍にころ…殺されるんじゃないですか!?】
【あぁ、だな。で?何が問題あるんだ?】
 今にも泣きそうな声ですがるムファスカーだが、
対するスバルナにとっては目を集中させて動きを追っているため非常に不愉快のようだ。
冷たく突き放し、現在進行形で行われているローズとチャーリーのやり取りを2人へと伝える。
【ひどい!ガルーダ殿と俺の仲じゃないですか!どうにかしてくださいよ!!】
【起きたものをどうしろというんだ…。大体、ヘタレな友人はあいにくいない。】
 更に突き放すスバルナにムファスカーは本格的に泣き出す。
その様子にロードクロサイトがため息をつき、キルもやれやれと首を振る。
【ひぃ〜〜!!ひどい!】
【黙って死ね!!】
 頭にきたスバルナが毒を吐くと、キルがため息混じりに割って入った。
【2人とも、黙って戦闘と観察してください。でなきゃこの場で鳥と猫の死体が出ますよ。】
 キルの一言でぴたりと黙るとスバルナは石像のように動かず、
四天王と魔王のための目に徹し、
ムファスカーは結界から出てきた数人に向け魔獣を先導する。
 
 
 
「ぜっ全然回復魔法が効かない!?」
「痛みはなくなったからいいよ。大丈夫。あともう少しすれば…。」
 回復魔法が効かず、焦るチャーリーにローズは大丈夫というと剣を構えた。
すると何も唱えていないはずのローズが光に包まれ、左腕のキズがふさがる。
「これは…。」
「こういうときは便利なんだけどね…。自動回復。
 チャーリー君もあるだろうけど僕のは気まぐれでさ、
 ギリギリまで発動しないんだよね。弱体化していたから今日は早かったけど。」
 はっとチャーリーはローズの左胸が淡く光っていることに気がつき、目を疑う。
「だからさ、」
 ローズに笑顔で起こさたチャーリーはその目を間近で見る。
ギラリと不気味に光り、チャーリーは思わず息を呑んだ。
まるであのシィルーズと名乗っていた四天王長のようと冷や汗が出る。
「印を持つ者ならばその責任をまっとうしろ!
 倒れても死なない身体を持ってして戦え。幾戦もの戦いを得ろ。
 経験をつみ技を磨き魔法を覚えろ。ユーチャリスの孫ならできるはずだ!!」
 つかまれた腕から光が流れチャーリーの身体を包む。
ローズが得ていた戦いの経験値の一部が身体へと流れ、足りなかった戦闘経験が補われる。
「これで少しは補正出来たろ…。
 あとは…チャーリー…君のセンスと…体が覚えること…だけ。」
 光が収まり、呆然とあたりを見渡すチャーリーは今まで感じられなかった気配や空気の流れを肌で感じ、今なら魔法の詠唱をせずとも魔法が使えると漠然と感覚でわかった。
これはどういうことなのかと、振り向いたチャーリーだがどさっ、
と言う音が聞こえ目を見張る。
長い髪に隠れ表情は見えないが動く様子はない。
 
 
「まさか傷口が開いた…とか言うことはないよな?」
「どうでしょう…。10年たちましたが…。
 ことあるごとに無茶しては開いての繰り返しでしたからね…。
 それに凍傷と骨折やらも同時で瀕死でしたから。
 それに今同じ場所にくらいましたし、また開いたかもですね。」
 様子を見ていたロードクロサイトはどうしたものかと呟く。
キルの言葉によく観察するとやはりわき腹を押さえ背を丸めている。
幾度となく光りに包まれ回復を試みているが魔力が足りず弱弱しい。
 
 チャーリーは飛び掛ってきた魔獣を切り倒すと、ローズを背に庇い呪文を唱える。
「ハオフォ【豪火】!レイニァオ【襲来:雷鳥】!ネティベルさん!!まだ無理ですか!?」
「無理よ!せめてこの近くに来てくれないとまだジミーの魔力が回復してないのよ。」
 強大な炎と稲妻を身にまとった鳥を飛ばす。
離れた位置から叫ぶチャーリーに結界を張りつつ回復をしているネティベルは首を振った。
 チャーリーは急にできるようになった詠唱破棄を唱えつつ、
自分に経験値をくれたローズを横目で見た。
相変わらず倒れた姿勢のまま動いてはいないが生きてはいる。
自分の残りの魔力を考え、魔獣の群れを見た。
だいぶ数は減ったが遠くにはまだ大きな獅子がいる。
それまでは温存しなければと、頭を働かせた。