早朝、突然城に呼び出されたキルは一体何があったのかと慌てて出勤した。
内部に入るのは3度目で重々しい装飾やオブジェにキルは身を硬くし案内された部屋へと入っていった。
「う…そ…。」
中は魔王の玉座と四天王の席が並べられた広間。
既に四天王3席は体が小さい魔獣王である薄い毛色をしたハムスターのジャンガリことキスケ、
幻術の女神と呼ばれる流れるシルバーブロンドの髪をした自分の母と同じ位…の美貌を持つ幻影術士ドゥリーミーことフローラ、
自分の父がいる軍を束ねる元勇者の銀髪に長髪の青年魔剣士ジキタリスことチューベローズがそれぞれ座っていた。
そして中央に座る、青い髪をポニーテールにした吸血鬼独特の容姿端整な若き魔王…ローキ=ロードクロサイト。
最年少で魔王の座に就き未だかつて無いほどの力を持った最強の魔王が巻物を手に座っていた。
入り口で思わず固まるキルにチューベローズが軽く口元を緩ませ笑う。
「ノーブリー=フィーンドゥ=キル。間違いないな。」
「はっはい!!」
突然声をかけられ思わず声が上ずる。
ぶっっと噴出したのは先ほど笑っていたチューベローズ。
「…ローズ、どうかしたのか?」
顔を赤くしたキルの目の前でチューベローズはこほんと咳払いをし、ロードクロサイトを振り向いた。
フローラもやや呆れた様子で苦笑をキルに送る。
「魔王様、昨日あれほどいったではありませんか。何がどうしたのかを我々が説明してから声をかけるようにと。打ち合わせ、聞いておりましたか?」
「あ…あぁ。ぜんぜん聞いてなかった。」
「魔王様…。では改めて、名前に間違いはありませんね。」
がっくりと脱力するチューベローズの向かい側、ロードクロサイトの右に座ったフローラも咳払いをし、やさしく確認を取る。
それに今度は声を普通に出し肯定すると、チューベローズは手に持った書類を広げる。
「本来策士を担う部隊はその両方に特化したものが就くというのが伝統です。
近年はそういうものが少なく、方針を変える予定でしたが、先日の試験において策士・暗殺ともに才能があるという結果がでました。
それゆえにノーブリー=フィーンドゥ=キルを本日付で四天王策士・暗殺部隊総長に任命します。それでは魔王様。」
目が点になってしまったキルの頭の中に仰天なニュースが飛び込んでくる。
「最年少であり未成年であるがため、重責であることはわかっている。しかし現状では適任はキルしかいない。引き受けてくれるな?」
やっと自分を取り戻したキルは汗が滝のように流れるのを感じた。
だが、母のため生活をよりよくするため、自分は出世できる限りしていこうと心に誓った。
今がまさにその機会ではないか。
「恐れ多い大任、未熟な自分には勤まるとは思えません。しかしあえてその大任ぜひともお受けしたく思います。」
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