引継ぎの資料の他にそれ以後に増え溜まった書類を分類わけすると、定時まで黙々と書類を処理していく。
未成年ということでいくら四天王でも特に切羽詰っていない限りは定時で帰るようにと、魔王からの命令により残業することはできない。
 
 
「おかえりなさい、キル。あら、今日はずいぶん疲れているみたいですね…。お城からはなんと?」
 出迎えたシヴァルは息子が疲れているのに気がつき、
目の高さにあわせしゃがむと疲労を浮かべながら目を輝かせる息子のほほに手を当てる。
「母さん…昨日言っていた四天王の策士の座…任命されました。魔王軍第2軍軍団長に…僕が任命されました。」
 母の顔を見てほっとしたのか、今更になり震えがとまらない。
その言葉に驚き、思わず眼をしばたくシヴァルにキルは抱きつく。
ようやく事態が飲み込めたのか、シヴァルは着物にしわができることも気にせず抱きしめ返す。
 
「まぁ…よく…よくがんばりましたね…キル。母は誇らしく思いますよ。」
「僕もまだ信じられません…。あぁ。それで明日の晩、母さんも四天王昇任の儀式とパーティーにぜひと…。
本当はジキタリス様がホットミミルから呼び戻す予定でしたが、
帰り際に何か事故があったという知らせを受け、ホットミミルとの連絡がうまく繋がらないそうです。
ですので…呼び戻すことは遠慮させていただきました。」
 事故を起こした張本人なのだから今頃、駆けつけたチューベローズから再び激しい怒りを受けている頃だろう。
 本部隊は既に帰路についているらしいが父だけはその場に残り、ごみ拾いやその他雑用をこなすこととなった。
そんな父を魔王じきじきに開かれるパーティーや儀式に連れて行くわけには行かない。
「それと母さん…。僕が四天王になったこと…父さんには内緒にしていただきたいのですが…。」
 いくら嫌っている父とはいえ、さすがに息子にこれ以上差をつけるのはショックだろうと、そう考えたキルの思いに気がついたのか、シヴァルはわかりましたと頷く。