作ったルーと煮込んだ具材を混ぜ合わせると見たことのある食べ物へと変わる。
そのことに目を輝かせるキルは食事を受け取りに来た猫又達の姿を見つつ、仕事の癖で取ったメモを巻物に清書していた。
 コトリと目の前に皿が置かれ、はっと顔を上げる。
「さっき食材買いに行くがてらシヴァルさんとこ行ってきたよ。キルは今日久々に模擬訓練をするから遅くなるっていうのと、僕のところで夕飯食べさせるから安心してって。」
「あぁ!そうだ…。すみません。ありがとうございます。鬼火を使ってメッセージを送ればいいんですが…物を燃やさず送り届けるのがまだ苦手で。でもきっと僕がその手紙がどの程度で燃えるのか分からないから、いつも燃やしちゃうんだと思います。練習あるのみ…ですね。」
 念話が使えないことをすっかり忘れていた、と立ち上がるキルにローズは笑って大丈夫だからという。
鬼火でメモを送ればいいのだが、どうしても火加減が難しくいれた瞬間燃えてしまう。
 
「念話の制限っていまいちよくわかんないんだよねぇ…。」
「魔王様、師匠、私達、副将、隊長格…この順で制限が厳しくなっていくって覚えておくと便利ですよ。」
 向かい合うように座るローズは念話って不思議、と呟く。
キルも四天王になってから使えるようになったこの力の制限について完全には把握できていない。
魔王でさえ把握できていないのだから当然といえば当然だ。
 
「あ…おいしい。」
「よかった。何か新しい具材に挑戦したいとか、これは調味料として、具材として入れてもいいかとか気になることがあればいつでも言ってね。僕、料理は好きだしさ。あ、そうだ。巻物見せてもらってもいい?メモのほうでもいいけど。」
 キルが一生懸命書いていたお料理本をみせて、という師匠に弟子はしぶしぶ見せる。
急いで書いたのだからあまり字はきれいではない。
それでもしっかり要点をまとめ、自分で考えたことの注釈と、手元を見て書いたのであろう備考にローズは嬉しそうにほほ笑んだ。
「ばっちり200点。」
 巻物を直し、キルの頭をなでるとキルは年相応な笑顔をとり、嬉しそうに笑う。
お代わりをとりに来たシャムリンは食堂ではなくこのキッチンで食事をする二人に目を止め、笑っている二人に仲がいいのねぇとしっぽを振った。
 念のためのつもりだった小物は料理に比べると簡単で、執務中の休憩時間などにタマモと話し合いながら試作品を作る。
料理についてはからかわれることを予想して2人には言っていない。