魔力を使い果たし眠っていたネティベルは3日目にようやく目を覚ました。
その様子を薄い金色の髪をした青年が気がつき、目の前で手を振ってみせる。
「あぁ、起きた?姉さん。」
「シネ。」
 目を覚ますなり見えた青年に開口一番嫌悪感丸出しの言葉を投げかける。
「何で生きてるわけ?あの爆発事故で吹っ飛んだんじゃないの?
 そのせいで私ひんしゅく者なんだけど。
 親には出てけーって言われたし。」
 落ち込む青年にネティベルは殺気を向け、思いっきりにらみつけた。
「ひっでぇえええ!!えぇ?
 だってずっとアルダ師匠のところで治療してもらってて、
 姉さんの治癒呪文がでかすぎて目覚めたんだよ。
 母さんと父さんは俺が叱っとくから…ちょちょちょっちょっちょっちょ!!!
 電撃魔法とかやめて!アダダダダダダアダダ。」
 八つ当たり気味のネティベルの魔法に吹っ飛ばされる青年。
起き上がって早々弟を締め付ける姉は入り口に現れた少年と老人に目をとめた。
 
「あの…ありがとうございました…。お体大丈夫ですか?」
 跳ねた黒い髪に赤い目の少年はおずおずと言った様子で声をかける。
どうやら先ほどのやり取りを見ていたらしい。
「ポリッター・ジェリーじゃ。」
「あっあの…。」
 アルダに紹介され、怯えた様子の少年は自分と一体化してしまっていた蛇を肩に乗せ、
おどおどと口を開き…。
「やっと捕まえたぞ!!アルダ!」
「捕まってないわ!大体、今回は本当に無関係だ!」
「そうよ!私達だってあの薬がなくなっているのに気がついて吃驚したのよ!」
 わーわーと声が聞こえ、深緑色の髪を無造作に括った男性と短い黒髪の女性が廊下に現れた。
 
「おぉ、久しぶりじゃのう。わしを覚えておるかの?その髪はカツラか?」
「ぇええい!黙れ耄碌糞爺!生やす薬の実験だ!」
「カツラだったのは先週までよ!」
 笑顔で迎えるアルダに赤い目の男性…ヴォルトはこめかみを引き攣らせ怒鳴る。
フォローしているらしいナギリーの言葉にやかましい!
と怒鳴ると引き連れてきたセスの腕を振りほどき、アルダを睨みつけた。
 
「ほっほっほ。そういえば犬にかまれた鼻は…。
 数年前まで無かった気がするんじゃが…。」
「とっくに再生済みだ!貴様らは俺様の血圧を上げる気か!」
「貴様がいっつもいっつもくだらない犯罪を重ねるせいでこっちは毎日高血圧だ!」
「俺様のサークルの下っ端だったくせにえらそうな口を利くな!」
「それをいうならヴォルトはわしの可愛い生徒じゃな。」
 ぎゃーぎゃー、といい年下大人が行うこととは思えないような口論をする3人。
 
 
「ポリッター、なんで薬と魔道書持ち出したの?」
 母、ナギリーは煩い3人を放っておき、息子の傍へとやってくる。
下を向くポリッターだが、肩に乗った蛇に手を置き、母の目を見た。
「だって…読めなかったから実践してみようと思って。
 効果に仲良しになるって書いてあったし。」
「眼鏡はどうしたの?あれが無いとあんた読めないでしょう。」
 まだ騒いでいるセルとヴォルトはさておき、
アルダとネティベルは親子の会話に思わず疑問符が飛び出る。
まさかとは思うがこの騒動…。
「眼鏡…あぁ!!ない!」
 はっと気がつく少年は母から新しい眼鏡を貰い、きょろきょろと辺りを見回した。
賢者3人の姿を見るなり口をあけ、驚いた様子で固まる。