一年後、子供は両親と共に昼間の丘へとやってきた。
久しぶりにこういうのもいいなと笑う両親と子は誰もいない丘で昼食をとっていた。
母と一緒に歌う姿に不安を覚えたホスターは声をかけようとして思わずとめる。
 あたり一面が秋の匂いから春の匂いに変わっていることに呆然と丘を見回した。
それに気がついたシュリーも歌をやめ、まだ歌っているわが子を見つめた。
 
 子供を中心に花が咲き乱れている。
 
 首をかしげた子供は両親を見ると辺りを見回し、顔を青ざめた。
ホスターに言われ、急いで家へと帰ると投げ込まれるようにしてあの部屋へと入れられ鍵を閉められる。
ごめんなさいといいたいが、声が詰まってしまい言葉にならない。
またやってしまった。
きっといけないことだったんだと、自責の念に駆られ声を押し殺しうずくまる。
外ではシュリーが倒れ、ホスターが声をかけていたが子供にはまったく聞こえなかった。
また無意識のうちに頭をかきむしり、僅かに指を濡らした。
 
 
 
 次の日、お母さん具合が悪いからと父に言われ、ごめんなさいという。
「気にするな。ちょっとおいで。」
 昨日はごめんな、といわれ気分転換に散歩しようと手を引かれる。
これ以上困らしたらダメだと、頷くとまだ日の高い村の中を初めて自分の足で歩く。
嫌な視線を受けつつ、初めて入る森にポカンと辺りを見回した。
しばらくそうやって歩いただろうか。
子供にしては初めて歩く長い距離に息を切らし、歩けなくなるとホスターが背負い、大きな木の前で降ろされる。
「ちょっと用事があるからここで待っているんだよ。お腹すいたらおにぎり食べていいからな。」
 そういわれおにぎりの入った包みを渡す。
おとうさんどこいくの?というのに迎えにくるまで動くんじゃないぞといい、頭を撫でた。
うん、と笑顔で返事をする息子を何度か振り返り、手を振り小さくなっていく子が付いて来ないことを確認するとホスターは立ち去った。