幼い頃お気に入りだった風景が見える丘に登ると、
その先端にある木陰に寄りかかる。
横を見れば母と父の眠る墓石が並んでいた。
そしてその上には先ほど置いた花束が揺れる。
自分が大好きだったこの丘に眠ることを二人は選び、
傍にいなくとも繋がっていると、そういうかのようにローズの心の支えとなった。
 
「ごめん。母さん。父さん。ユーのこと泣かしちゃいました。
 兄なんだから守るんだとそう思っていたのが全て間違っていたみたいです。」
 守っているつもりがどうしようもないほど彼女を傷つけ、
そして悲しませていたとローズは俯く。
ローズにとってユーチャリスは初めて自分を見て求めてくれた、
チューベローズ自体がそこにいてもいいと存在を認めてもらったかけがえの無い、
自分が人間であることを繋ぎとめてくれたそんな存在だった。
化け物と呼ばれる中、勇者の紋だけでなく、
兄として…家族として…人間としてみてくれた。
だから魔物になった今でも一部人間の能力のままと、
人間を捨て切れなかった最後の絆だった。
 
 
 だんだんと茜色に染まる空を見ていたローズは、
背後から来たロードクロサイトに気がつき、そこで初めて頬が濡れていることに気がついた。