以前も助けてもらったため、今回は自分たちでどうにかすると言う村長を押し切り、問題の山道へと一行はやってきた。
 村から少し離れたこの山は確かに結界で覆われて中には入れない。
「ぶったぎって壊すしかないかなぁ。ピスケス、どう?」
 軽い電撃が走る結界を剣で軽き叩くアリエスは、結界を調べる魔導師コンビを見る。
ピスケスは首をひねり、どうしたものかと考えているがサジタリウスは何を思ったのか、結界に手をつき、そのまま中へと進んだ。
「おま危な…あれ?」
 抵抗もなく入っていくサジタリウスにアリエスは目を瞬かせた。
当の本人も驚いているが、すっかり結界の中に入っており、結界に阻まれていない。
「サジタリウス…これって…。」
 驚くピスケスにはっと息をのむサジタリウスはフードから見える白い顔を更に青くした。
 
「ある一定の魔力をもったものなら入れるようだな。わたしに掴まりながら入れ。そうしたら入れる。」
 どういうことか、そう聞こうとしたアリエスは首元を掴まれ、言葉をのみ込む。
掴んだ張本人、アクアリウスをにらむが、同じように掴まれたキャンサ、とピスケス、そして自分が結界の中に入ったことに口を結んだ。
どうせ自分は剣士タイプの勇者。魔道のことなんてあんまり知識は深くない。
「そっそっか。あーびっくりした。まったくサジタリウスは私に内緒で特訓してたのね。」
「うっうん。」
 あはは、と笑うピスケスにサジタリウスは曖昧に頷くと、アクアリウスに目を移す。
まだ青い顔のサジタリウスは、口元を指で押さえるアクアリウスにこくりとうなずいた。
「それにしても…本当にお前たちは無知で馬鹿で迷惑な利用しやすいやつらだな。」
 まったく、と大きく溜息を吐くアクアリウスはさっさと山道を歩き始める。
突然の言葉にかっ、と頭に血が上ったアリエスは見下すような眼をした魔王の胸倉をつかんだ。
「てめぇ!!この村がどんなに困っていたか知らない癖にばかにするんじゃねぇ!ちょっと長生きしているぐらいで人間を見下しやがって!」
 アリエスは自分より高い位置にいる魔王の感情の読めない冷淡な眼を睨みつけた。
それでも表情一つ変えない魔王にアリエスはさらに顔を赤らめると拳を強く握った。
 慌てたようにキャンサーがアリエスの手を止め、アリエスは突き飛ばすように胸倉をつかむ手を放す。