先日の体調不良など微塵にも見せないアクアリウスは翡翠色の髪を揺らし、再び魔導師トークをしていた。
「どうも人間たちの魔法が弱いと思ったら…。そんな方法で取得した魔法の熟練度を上げたところでたかが知れているだろうが。」
「古文書のほとんどの解析方法は数百年前に失ったんで、今は違う方法だ。解読したのを発表するだけで一軒家が買える。前に挑戦したけどあれは無理。」
 魔方陣を組んで体に入れ、そして魔法を唱えて実際に使って…。
そしてようやく次の魔法を覚えられるようになる、というピスケスに呆れた声を出すアクアリウス。
ちゃんとした取得方法が記載されているという古文書は解読できただけで富ができ入る、というサジタリウスにアクアリウスは嫌そうなため息をはいた。
「あ…あぁ…。あれか…。あれは…文字を描いた人間の頭を疑うな…。」
「え…。長年生きている魔王ですら読めないの?」
 驚くピスケスにアクアリウスは興味本位で目を通したことがある、と答え3人そろってため息をはいた。
 
「本当にあいつら仲がいいというか、なんというか。」
 ため息をつきたいのはこっちだ、と思わず出そうになるため息を飲み込むアリエスはフードを脱いでいる魔王の頭を見た。やっぱりどう見ても翡翠色。黒ではない。だが、キャンサーも同様に見たという。しかも朝。そういう魔物ファッションなのか、と結論づけたアリエスだが、やはりちょっと気になる。
真正面から聞いて素直に答えるような魔王ではないが。
 
 
「で、カスピだっけ?って誰?」
 唐突なサジタリウスの言葉にアリエスは思わず魔王に注目する。
「カスプだ。間違えるな。で、誰でもいいだろう…不意に聞いて聞きだそうとしたんだろうが、あいにく単純なアホと違ってそう簡単に口は滑らせないぞ。」
 単純なアホ、としっかり後ろを歩くアリエスを親指で示す。
もちろん見逃しているはずもなく、アリエスのどなり声と、キャンサーの止める声が山にこだました。